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特集 (2)「日本物」の障壁をクリアした「一夢庵風流記」

2014年8月20日更新
写真:「一夢庵風流記 前田慶次」より、前田慶次役の壮一帆=撮影・岸隆子 「一夢庵風流記 前田慶次」より、前田慶次役の壮一帆=撮影・岸隆子

 とはいえ昨今、タカラヅカの「日本物」を巡る状況は厳しい。ご贔屓(ひいき)スターがいる組が「日本物」にあたってしまうと意気消沈するのが、今どきのタカラヅカファンである。とくに最近ファンになった人はその傾向が強い。最近は上演回数も減っているから馴染(なじ)みも薄い。たまに見せられても、日本物の独特の世界にはとまどいも大きいだろう。

 ファンが日本物に抵抗を感じる理由としては「着物の良さがわかならい(軍服やドレス、スーツみたいにカッコ良く見えないし…)」「日本物の化粧が異様にみえる」(白塗りって化け物みたい?)「ゆったりとした展開がもどかしい」(スピーディーな舞台展開に慣れてしまったから…)といったことが挙げられると思う。

 だが「一夢庵風流記 前田慶次」はこうした障壁をいずれもクリアした作品だった。まず、今回の衣装は着物といっても観ていて楽しい。主人公・前田慶次は「かぶき者」だから、当然衣装も派手に「かぶいて」いる。ドクロ柄など斬新な柄も多い。雪丸(未凉)は全身黒ずくめのクモの巣柄で不気味だし、重太夫(夢乃)のちぐはぐな色合わせの衣装はファンキーだ。

 化粧も、日本物のショーのような白塗りではないから馴染みやすい(日本物のショーの行く末については課題が山積していると思うが、それはまた別の機会に)。映像を駆使したスピーディーな場面展開で、観る者を飽きさせない。加えて、慶次の愛馬・松風が今回は人気をさらった。「中の人」は松竹から来てもらった、この道一筋のベテランなのだという。

 物語は、豊臣、前田、北条、そして徳川と各戦国大名の思惑が複雑に絡み合う。一度観ただけだとややわかりにくいかもしれないが…壮・慶次の「かぶきっぷり」で全てが許されてしまうといったところか。願わくば、これまで「更に狂はじ」「月の燈影」「花のいそぎ」「睡れる月」などバウホールで数々の秀作を生み出して来た大野拓史らしい深みのあるストーリーを、今後は大劇場作品でも展開して欲しいところだ。

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