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特集 (3)理想的な格好良さの「情熱のバルセロナ」

2014年11月18日更新
写真:「パルムの僧院」公演から、ファブリス役の彩風咲奈=撮影・岸隆子 「パルムの僧院」公演から、ファブリス役の彩風咲奈=撮影・岸隆子

 今回との大きな違いはまず舞台がスペイン・バルセロナであること。このため闘牛士風の衣装の男役がしばしば登場、ダンスシーンではタカラヅカお得意のフラメンコ風の舞踊が多用され、見せ場となっている。

 また、原作では自由主義者フェランテと、ファブリスが殺人事件に巻き込まれてしまう旅芸人一座との間には全く関係がないが、「情熱のバルセロナ」ではここがまとめられている。ラファエルはジプシーの一座の仲間であるという設定。たまたまフランシスコが昔なじみのジプシーたちに会いに行ったとき、ラファエルの妹モニカ(仁科有理/早花まこ)の恋人ディエゴ(葵美哉/祐輝千寿)に絡まれ、乱闘から誤ってディエゴを殺してしまうという展開だ。

 しかし、2作品の違いを象徴するのは何といってもラストシーンだろう。「情熱のバルセロナ」のラストは美しい別れのシーンだ。フランシスコとロザリアの2人は引き裂かれるような思いを感じつつも、自らきっぱりと別れを選択する。フランシスコは神に仕える道を、そしてロザリアは親の決めた相手と結婚し妻となる道を、それぞれ歩んでいくのだ。

 「情熱のバルセロナ」の主人公フランシスコが一途に愛するのはただ一人ロザリアのみである。叔母の愛は知りつつも、フランシスコのほうはただ親族としてその愛を受け止めるのみだ。貴族でありながらジプシーたちからの人望も厚く、もちろんモニカとの恋愛関係はない。そして、宮廷での無益な権力争いを憎んでいる。いかにもタカラヅカらしい、理想を絵に描いたような青年である。基本的に自分の幸せの追求にしか興味がないファブリスとはえらい違いだ。

 リンダ侯爵夫人はフランシスコへの偏愛を自覚しているが、節度もわきまえている。甥の命を救うためにエドワルド大公に身を委ねる決意をするとき、そこには自己犠牲の精神が感じ取れる。そんな彼女に比べると、ジーナははるかにわがままで自由奔放に生きている。ルイス伯爵だってモスカ伯爵のように嫉妬に狂ったりしない。最後まで温かいまなざしでリンダやフランシスコを見守り続ける大人の男性だ。

 ロザリアの婚約者セルバンテス伯爵が彼女の本心をくみ取って身を引く決意をする場面もタカラヅカらしい見せ場になっている。その潔さは、とりあえず口だけで「身を引きます」と言ってみるクレサンジ侯爵の調子の良さとは大違いだ。

 ラファエルは自由主義の闘士であり、リンダ公爵夫人に騎士道のような愛を捧げている。いっぽう今回の登場人物の中では最も正統派なアツい二枚目キャラと思われるフェランテでさえも、どこかユーモラスで飄々(ひょうひょう)とした味わいが感じられた。

 要するに「情熱のバルセロナ」の登場人物のほうが、ことごとく理想的な格好良さを備えている。だが、どこかで「こんな人、実際にはいるわけないよね」という思いがよぎる。良い意味でも悪い意味でも「タカラヅカ的」なのだ。

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