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特集 (2)柔らかさと鋭さの両面が見られる、適役の浦井

2015年7月29日更新
写真:「トロイラスとクレシダ」公演から=撮影・細野晋司(世田谷パブリックシアター提供) 「トロイラスとクレシダ」公演から=撮影・細野晋司(世田谷パブリックシアター提供)

 浦井は、「戦に行きたくない」と叫ぶ冒頭から、全身全霊をかけて戦いに身を投じるまでを、みずみずしく生気に満ちて演じている。その過程には、クレシダを愛し、愛を成就させ、さらにその愛に裏切られるという物語が中心にある。感情の振り幅の激しさが際立つ役だ。

 2009年に「ヘンリー6世」を演じたときは、初めての大舞台の中心で、芝居達者のベテランたちに囲まれて、ふわっとした印象だった。それが役によくあっていて良かったのだけれど。6年の経験を経て、つねに芝居の中心を担うポジションへと成長した今作では、地に足をつけて芝居の流れを動かす力を持っている。激しい怒りをもって戦いに身を投じていく場面では、今までに聞いたことがないような叫び声をあげ、狂犬のようだった。浦井がもつ柔らかさと鋭さの両面が見られる適役だ。

 ソニンが演じるクレシダは、欲望に素直な女性という印象。とてもピュアで魅力的、トロイラスだけでなく、ギリシャの男たちを魅了するのも納得のクレシダだった。クレシダは不実な女性の代名詞とされる女性だが、決して悪女には見えなかった。「トロイラスにはもう会えないかもしれない」「目の前に魅力的な男性がいる」という彼女の心情に寄りそうならば、トロイラスを思いながらもダイアミディーズに揺れる心情も理解できる。

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