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特集 (4)思い立ってウィンクしてみたら、客席が……!!

2015年12月4日更新
写真:緒月遠麻=撮影・岩村美佳 緒月遠麻=撮影・岩村美佳

――とても柔軟でいらっしゃるように見えつつ、でも「頑固なんです」とおっしゃるのは、不思議な感じがします。

 気質的に私は、支えるほうが好きなんですよ。なので、今回すごく気負ってます。ドキドキしてます。

――どうしてですか?

 いちおう自分が芯なので、「できるのかな?」と思って。じつはこのお話、最初はお断りしたんです。自分のことは自分でわかるので、「私は向いていないな」と思ったので。でも、あらすじを読ませてもらったとき、「面白そう!」と役者魂に火がついてしまい、天秤(てんびん)にかけたんです。「自分が主演で大丈夫だろうか?」ということと、「本が面白い! 役者としてやってみたい!」ということと。それで役者が勝っちゃったんです。

――すごい! 緒月さんをそこまで動かした脚本、楽しみです。

 そうなんですよ。でも、みんなが主役ですから! 私は年長っていうだけ。

――じつは宝塚時代の緒月さんの舞台を昔からずっと拝見させていただいていて、「猛(たけ)き黄金の国」(01年雪組)という作品で、坂本竜馬にハリセンで殴られる海援隊士をされていたころから「面白い人だな」と思っていたんです。

 古い! 古い~!!

――そういう面白い役も多かったじゃないですか。でも、カッコいい二枚目もできる、宝塚的にいうと稀有(けう)な存在でいらっしゃったと思いますが、ご自身の意識としては、自分は二枚目? スター? 何だったのでしょうか?

 スターと意識したことは1回もないです。でも、自分がその役を演じることで、その場面や作品のレベルを下げてはいけないという思いは、それこそハリセンのころからありました。もともと心配性だし自信もないので、どうやったらこの作品が良くなるかということを、微力な下級生ながらすごく考えていたのを思い出します。それは卒業するまでずっと変わらなくて、どうやったらお客様に楽しんでもらえるだろうかという意識のほうが強かったですね。だからやっぱり、支える気質なんです。

――スター制度に翻弄(ほんろう)されたりはしなかったですか?

 全然、全然! どんな役を頂いても楽しめました。あの状態で卒業できたのは奇跡としか言いようがなくて、「緒月にこういう役をさせてみよう」と思ってくれた先生方のおかげです。あんなありがたい状態で卒業できたので、本当に何だか申し訳なくて。だからこそ、ちゃんと応えなきゃいけないし、応えるだけではなくてそれ以上のものを与えることができなくてはという、プレッシャーといいますか、恩返ししなければという思いが本当に強かったです。

――でも、宝塚という舞台はカッコ良さとか、お客さんを「キュンとさせる」ことも、すごく求められる場じゃないですか。そういう部分は?

 ……そうですね。みんなよく銀橋などでウィンクをするんですけど、私はあまりそういうことはしなくて、でも一度、ふいにウィンクをしてみたら、その後セリ下がったときに客席が「うわー!」とどよめいたんですよ。

――(笑)

 そこまで珍しいんだと思って、「もうやめよ」と思っちゃった。

――でも、それを見た人は?

 すごい、ざわついていました。それで「えええ?」と思いながらセリ下がっていきました。めったにしない人がウィンクをすると、こういうことが起こるという現象を味わって、やっぱりウィンクの乱用はいけないなと思いました。すべては心を込めてやらなきゃいけない、と。でも、そのときもたまたまやったわけではなくて「今日やってみよう」と、朝から思っていたんです。

――どうしてそう思ったのですか?

 毎回、安全パイでいるのもどうかなと。宝塚のお客様はリピーターの方が多いので、どうしたら楽しんでいただけるかと考えたときに、めったに私がしないことをやったらどうなるんだろう?と思ったんです。やってみたらすごい反響で、「また見たいです!!」といったお手紙もいただきましたが、「ああ……もう無理です」と(笑)。そういう、ちょっとシャイな部分もあるんですよね。

――その後、ウィンクはやったんですか?

 貸し切り公演などですね。男役という職業は、お客様に夢を見せないといけない部分もあるじゃないですか。そういう部分にもっと応えていかなきゃいけなかったんだなと、卒業してから思いました。客席も恥ずかしくて見られなかったりしたんです。でも、自分が見に行ったら、客席から見てくれるとすごくうれしかったので、やっぱりそういうことも恥ずかしがらずにやればよかったなと、思ったんです。

――なるほど……。

 でも、前回の「希望のホシ」では、やっぱり男役というものが何かひとつ脱げたので、客席もゆっくり見られたし、ファンの方々もたくさん見られたんです。男役ではない自分を応援してくれる人がこんなにいるんだということが、改めて、すごくうれしかったですね。

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