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特集 【トピックス】ミュージカル「エリザベート」出演
蘭乃はな、3年目にして行きついた新しいテーマを掘り下げたい

2016年6月22日更新
写真:蘭乃はな=撮影・Y.OZAKI 蘭乃はな=撮影・Y.OZAKI

 昨年、キャスト、舞台美術、衣装を一新し上演された「エリザベート」。ハプスブルク帝国最後の皇后エリザベートと黄泉の帝王トートの愛と死の世界が、今夏、再び戻ってくる。昨年に引き続き、花總まりと蘭乃はながタイトルロールのエリザベート役を、城田優と井上芳雄がトート役を演じる。大阪で蘭乃の合同記者会見が行われ、その後、スターファイルで個別インタビューを行った。(ウエストプラン・真名子陽子)

 まずは、蘭乃のあいさつから。

蘭乃:宝塚時代から3年続けて「エリザベート」に出させていただきますので、より一層深めた役作りをし、進化した歌唱をみなさまにお見せできるように日々精進したいと思っております。よろしくお願いいたします。

 続いて、記者との質疑応答へ。

記者:昨年東宝版を演じてみて、宝塚版と東宝版の大きな違いはありましたか?

蘭乃:宝塚版は副題に「愛と死の輪舞(ロンド)」と付いています。トートとエリザベートの愛が物語の主軸になっていますが、東宝版ではエリザベートというひとりの女性が、いかにして魂の自由を求めて生きていくのかがメインテーマになっています。それが大きな違いだなと感じました。

記者:昨年を踏まえて、今年はどんな風に役作りをしようと思っていますか?

蘭乃:昨年、一昨年と、エリザベートは自由を求めていた、というところにフォーカスして演じていましたが、自分のエリザベートに足りないものは何か、この作品をもう一度見て自分が何を思うのかを確かめたくて、昨年の大千穐楽の公演を見たんです。その時、プロローグで答えが出たんですね。亡霊たちが「ひとりでさまよって何を求めていた」とエリザベートへ問いかける歌詞があるのですが、それを聞いた瞬間に、エリザベートは愛を求めていたんだと、プロローグで答えに行きついたのです。誰かに愛されたい、誰かを愛したいといった、一般的に考える愛ではなくて……。

 この1年、あたためていることなのですが、エリザベートは自分自身を愛することがずっとできなくて、最後に自分自身を愛する準備ができたから殺されたんじゃないか、ということを今感じています。「自分を愛する」……これは人類共通のテーマなのではないかなと思っています。普段、意識して考えないけれど、目に見えない、潜在的に心の中に宿っている難題だからこそ、この作品がたくさんのお客様の心に響く作品になっているのだと思います。3年目にして行きついた答えで、自分の中の新しいテーマなので、それを掘り下げていきたいと思います。

記者:宝塚退団後、初めての舞台でしたが、どのような気持ちで日々、舞台に立たれていましたか?

蘭乃:自己否定の中、精神的なことや肉体的なことを含めて、いろんなせめぎあいの中で演じていました。今、振り返るとエリザベートと同じだったんだなと思うのですが……。エリザベート役は、自分の肉体を通して彼女の魂を表現していくので、本番が終わってすぐに自分の生活に切り替えることができない特別な役なんですね。きっと今年も大変な日々になることは変わりないけれど、昨年から役への向き合い方が変化していく気もしますので、どうなるのか自分でも楽しみです。エリザベートとしても女優としても進化したものをお届けしたいと思います。

記者:蘭乃さんが変化したように、蘭乃さんの中のエリザベート像はどのように変化しましたか?

蘭乃:「戦う女性」と言ってしまうのが一番簡単ですが、では何と戦っているのか? 表面的にとらえると、嫁しゅうとめ間や夫婦間の問題、自分の子供と向き合えない葛藤、その部分では共感できるところはたくさんあると思います。ただ、根底には自分を愛せないというところがあるので、どういう女性かというより、どういう人間か、魂で感じていることは何かを考えています。あえて言葉にすると、自分を愛せているのか、というものを日々感じながら過ごしている女性だと思います。

記者:花總さんとのWキャストについてはいかがでしたか?

蘭乃:宝塚歌劇団に入るきっかけとなったのが、花總さんが出演された宙組の「エリザベート」でした。私にとって花總さんは偉大な存在でレジェンドです。その方とのWキャストはプレッシャーですし、考えれば考えるほど自分を否定することにつながっていきました。でも、なぜこの作品に呼ばれたのかを考えて、「蘭乃はなのエリザベート」をお見せしようと最近になってようやく思えるようになれました。自分の解釈でエリザベートは何を求めていたのか、どう生きたのか、というものを、私の肉体を通してエリザベートの魂をお客様に味わっていただくことが、私のやるべきことだと思っています。

記者:花總さんから稽古場などでアドバイスを受けたり、学んだりしたことなど、花總さんとのエピソードはありますか?

蘭乃:稽古場で“花總まりのエリザベート”をつくっていく姿を拝見できたことが学びでした。このシーンはこう演じてみようと思われたら、そのシーンを演じる間、その軸が絶対にぶれないんです。その積み重ねが、花總さんのエリザベートになっていくんだなと目の当たりにしました。同じ役なので共演はないのですが、同じ空間にいられて、ずっと憧れて尊敬している役者さんのお稽古を見ることができて、大きな糧になりました。

記者:トートもWキャスト(城田優・井上芳雄)です。共演されてそれぞれのトートはいかがでしたか?

蘭乃:本当に正反対なお二人で、城田さんは稽古場ではにぎやかな方なのですが、いざトートを演じる瞬間に静のエネルギーを出されて、静寂の闇の中から現れるトートといった感じです。井上さんは、稽古場では寡黙にお稽古をされていますが、いざ演じる時は激しくて、燃え盛る炎のような印象です。お二人のギャップと、それぞれの稽古場と本番とのギャップ、その違いがありました。お二人と共演できて、とてもうれしかったです。

 合同取材後、スターファイルで単独インタビューを行った。真っすぐに素直な言葉で答えてくれた。

――東宝版「エリザベート」への出演の話が決まった時はどう思いましたか?

 とんでもないことになってしまったなと……。

――出演に際しては悩まれたんでしょうか?

 悩む間もなく、やってもらいたいという連絡でした。宝塚を退団した時は、芸能活動をすることなど考えてもいなかったんです。事務所にも入っていませんでしたから。お電話をいただいて、びっくりしてガクガクしましたが、エリザベートを演じなさいということだと思ってお受けしました。

――同じ演目を違う環境で、続けて演じることについてはいかがでしたか?

 違う環境だとわかって入っていれば、もっと計画性のある入り方ができたのでしょうけれど、やはり入ってみないとわからないんですよね。花總さんがエリザベートをつくっていかれる姿をみて、こういう風にお稽古していくんだなと、そこから学んでいきました。

――お稽古に入って、一から学んでいかれたんですね。

 百聞は一見にしかず。外の世界に入ってみて、あっ、こういう風に準備をして、こういう風にお稽古をしていくものなんだ、と勉強になりました。最初は手探りでしたし、自己否定などの邪念も多かったです。

――先ほども自己否定をしていたと聞いて、宝塚でトップ娘役をされていても自己否定するんだと驚きました。

 その繰り返しでした。それでも、自分の支えだったのは、半年前までエリザベートを演じていたという勢いが残っていて、自分の中でまだエリザベートが息づいていました。エンジンが回っている状態で現場にたてたことはよかったなと思います。

――昨年の「エリザベート」の後、他の舞台に出演されたり、写真展などを開催されたり、いろんな活動をされています。その経験を踏まえて、今回出演されるお気持ちはいかがでしょうか?

 昨年はうろたえてしまったのですが、もう一度させていただけるんだという喜びが大きいですね。そして去年のことを踏まえたうえでの覚悟があります。

――その覚悟はどういったものでしょう?

 昨年は、未熟な部分が多く、自己否定が強すぎて……。その苦しみも生かせる役ですので悪いことばかりではなかったとは思うのですが、あまりにも心残りが多すぎたので、同じことを二度と繰り返さないでおこうと。

――退団後の初めての舞台に対するプレッシャーに押しつぶされていたのでしょうか?

 本当に、押しつぶされていましたね。

――では今回は、そういったこともクリアできそうですか?

 押しつぶされていることに気づいていながら、誰にも言えなかったり、気づいていないふりをしたりしていました。自分に対して敏感になりましたし、自分で自分を見るということが、昨年のエリザベートへの出演をきっかけに変わってきたことだと思います。

――先ほど、エリザベートは自分を愛せたんだと言っていましたが、今、蘭乃さん自身、自分のことを愛せていますか?

 ……途中です。エリザベートと一緒に成長していけたらいいなと思っています。

――今後は、どのような活動をしていきたいと思っていますか?

 等身大の現代的なお芝居にも挑戦したいですし、歌も続けていきたいです。ロックが好きなので、ロックを歌えるようにもなりたいです(笑)! いろんな新しいことにチャレンジしていきたいと思います。

――昨年は東京公演のみでした。今回は全国公演があり、待ってました!というお客様も多いと思います。

 やっと、各都市の皆さまにご覧いただけるので、気持ちも高ぶっています。特に大阪は宝塚時代からのホームタウンですので、以前から見守ってくださっていた方々が見に来てくださることがうれしいです。ホームタウンに帰ってきたぞという気持ちで、楽しんでいただける舞台をお届けできるように、日々楽しんで演じたいと思います。

 いやが応でも比べられてしまうWキャスト。その相手が花總まりということもあり、その葛藤は計り知れないものがあったのだろうと推測する。それでも、足りないものを探して千穐楽に観劇し、新たな気づきを得て前を向く蘭乃。その進化したエリザベートを楽しみに待ちたい。

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◆ミュージカル「エリザベート」
《東京公演》2016年6月28日(火)~7月26日(火) 帝国劇場
《福岡公演》2016年8月6日(土)~9月4日(日) 博多座
《大阪公演》2016年9月11日(日)~30日(金) 梅田芸術劇場メインホール
《名古屋公演》2016年10月8日(土)~10月23日(日) 中日劇場
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://www.tohostage.com/elisabeth/index.html

《筆者プロフィール》真名子陽子 (株)ウエストプランで「スターファイル」の企画・編集を行っている。舞台のおもしろさは「フィクションをノンフィクションで見ること」。ひとりでも多くの人に舞台を見てもらえるように、心を動かしてもらえるように、情報を発信していきたい。