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――「王家の紋章」は日本発の作品で、漫画が原作の独特でオリジナリティーのある作品ですね。
「王家の紋章」はミュージカルというよりは見せ方はショーに近い気がしました。その世界観が好きとおっしゃってくださるお客様もいらっしゃいますよね。でも、すべてが「ミュージカル」というくくりにはして欲しくないんです。お芝居、ミュージカル、オペラ、バレエ……と分けるならば、ミュージカルの中にもいろんなジャンルがあるんだということを認識してもらえると、僕もグランドミュージカルで活躍しやすくなるかなと(笑)。
――なるほど。
僕もまだまだ偉そうなことはいえませんが、まず一番に役者が育たなければいけないですし、次に作り手たちも変わらないといけないと思います。興行的な成功はもちろん大切ですが、そこだけに力を注ぐと作品の芯がブレてしまうんじゃないかと思うんです。もちろん「グランドホテル」にもまだまだ課題がありましたので、再演するならばその課題をクリアしていかなければいけないと思います。
――自分の考えに近い仲間が増えてきている感覚はありますか?
ありますね。「グランドホテル」の現場で、仲間がいたんだとわかりました。成河くんが同じ考えを持っていることはわかっていましたが、彼はこれまでミュージカルの現場にあまり入ってきていなかったですし、それまでは結構孤独でした。自分しか現場で発言していませんでしたから。でも思いきって話してみると、みんないろんな思いを抱えているんですよ。僕は突破口を開き続けてきたつもりですが、その現場で出会えた仲間が実はそれぞれの現場では発言していたことがわかって、同じ考えを持っていたんだと知ることができました。
成河くんは頭もいいし、何よりボキャブラリーが多いので僕が説明しきれない部分を言葉で補ってくれたり、豊富な経験もあったり、手法は違っても感覚は同じだなと思いました。光夫さんは劇団四季出身ですが、芝居畑の方ですね。みんなセリフひとつひとつの語尾まで気にしていましたが、ミュージカルの世界でそこまで気にする人はほとんどいません。ひとりで戦うことは難しいですが、全員が同じ方向を向いているから言い合えて、全体を変える力になったんです。
――空気が通っているんですね。
それまでミュージカルの現場では気を使って芝居をしているというか、ディスカッションしないのはなぜなんだろうと思っていました。そういうときって空気が流れていないんです。もっと上下関係とかとっぱらって言い合ってもいいと思うんですよ。こういう話をすると面倒くさがられちゃいますけど(笑)。
――でも、ともに言い合える仲間が増えてきたんですもんね。
そうですね。芝居をともに作る仲間や、制作側、さらに、伝えてくれる批評家やマスコミのみなさん、そして観客のみなさんと組んで一緒に進化していきたいですね。
――今年の「エリザベート」では、成河さんがルキーニ役で出演し、今までにないリアリティーを吹き込んでいます。私はゾッとするほどの衝撃を受けました。実際評価もされていますし、観客も変化を感じているんじゃないでしょうか。
もしかしたら、お客さんは待ってくれているのかもしれないですね。