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特集 (4)役者が持っている感覚を大事にして戦うべき

2016年10月7日更新
写真:伊礼彼方=岩村美佳撮影 伊礼彼方=岩村美佳撮影

――2009年から伊礼さんの舞台を拝見していますが、「グランドホテル」を見たとき、正直いつの間に歌の技術が上達したんだろうと思いました。

 ありがとうございます。特に技術面で何をどうした、というより、型にはめる人がいなくて、自分がやりたい表現ができたからだと思います。

――例えばルドルフ役のときは苦労されていましたよね。

 自分の引き出しにまったく無かったクラシカルに歌うように制限されていたので大変でしたね。未知の世界でした。

――その後、歌う作品を積み重ねたというわけではないと思いますが、どんな経験がプラスになったのでしょうか?

 歌唱指導の方が「丹田に力を入れて」とよくおっしゃっていたんですが、当時はあの感覚が全然わからなかったんです。それで悩んでいる時期がありましたが、解決するきっかけをくれたのはマテ・カマラスですね。マテは、音楽は自由に歌った方がいいんだと。僕も自由に歌いたいと思っていたので、背中を押されました。でも、作品のなかでは制限があったんです。芝居のなかでもっと歌が揺れてもいいんじゃないか、音程を合わせなくてもいいんじゃないかと思っていたんですが、意外とみんなそうではない。そういう芝居だからそういう歌になっているという見方をしないで、歌がずれていると思われる。そうではなくて、こういう芝居の流れだから、歌がずれるのはあたりまえだと思うんです。「グランドホテル」は男爵という自分が主軸となる作品だったから、自分の空気を作れたんです。

――ということは、伊礼さんがセンターの作品なら、ああいうミュージカルが見られるんですね。

 その可能性はあるかもしれませんね。「グランドホテル」のような作品は今このタイミングで巡り合えて幸運でした。あとは、芝居の現場をとおして表現力がついたのかもしれません。特別に歌のレッスンをしたわけではないので。

――もし若い人たちがもっと歌えるようになりたいと思ったら、きっとレッスンをすると思いますが、そうではないんですね。

 基礎レッスンはもちろん大切ですよ。でも、間違いなくそれだけではない!ってことですね。もうひとつ大きいのは、鴻上(尚史)さんの作品に出させて頂いたことです。鴻上さん特有の演劇の作り方なんですが、ノンブレスでものすごく長いセリフを言わなければいけないんです。その言い方をするには、相当息をためなければいけなくて、その時に初めて丹田に力を入れるというのが理解できました。

――そうなんですか!

 日本人は言葉を大事にするので、通常ブレスの位置などもすべて決まっているんです。でも、「グランドホテル」では音楽監督もイギリス人でしたから、日本語が全然わからなかったんですね。日本語に関係なく「ここはノンブレスで歌いたい」と結構無謀なことを言うんです。僕の歌った「Love can’t Happen」はロングトーンを伸ばす歌ですが、芝居で肺活量と丹田を使うことを培っていたので、オリジナルよりもロングトーンを伸ばせたんです。そうしたら音楽監督はさらに2小節足してきました(笑)。ブレスを使わずに伝える技術もあるんですね。「王家の紋章」でもそれを応用して歌サビ部分ではブレスをせずに、一気に歌っていて、こういう伝え方もあるんだと学べました。それはとても演劇的なことでもあるんです。

――これまでの経験がいろんなところにつながってくるんですね。

 もちろん指導者がいてくださることは大きいです。なるほどと理解できること、ディスカッションをして自分が考えた結果、成功して得られたこと、さまざまあります。納得できないことをうのみにしたり、反対にすべてを否定したりするのではなく、役者が持っている感覚を大事にして戦うべきだと思っています。もちろん教えて頂くことが大事なときや役に立つこともたくさんあるから、すべてを否定しているわけではないですが。相乗効果ですよね。

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