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特集 (2)木が「まぶしい」……その息吹はどこかに入れたい

2016年10月21日更新
写真:松下洸平=岩村美佳撮影 松下洸平=岩村美佳撮影

――本当に、貴重な体験をされたのですね。

 実際に行かなければわからないことだらけでした。役を演じるときに大切なのは「想像力」だと僕は思ってるんです。僕たちは戦争を経験していないし、その悲惨さもわからない。だけど、舞台の「木の上」で僕たちが客席の奥の方を見ているとき、その先に登場人物たちが何を見ているのかを僕たちが想像できていないと、お客さまも想像できないと思うんです。そういう意味では、伊江島に行って実際その木の上に登り、そこから景色を見ることができたのは、とてもいい経験でした。写真や映像は東京でも見られるけれど、実際にこの手で木を触り、肌に触れたときの感触は、これから稽古するにあたって、とても重要な資料になりそうです。

――「木が語りかけてくれた」そうですが、何と語りかけてきたのでしょう?

 うーん……言葉にするのは難しいのですが、実際に登ったとき、とても力強いエネルギーをもらいました。僕、いわゆるスピリチュアルなところは全然ないのですが、登って、枝を持ってみると、何だか2人の兵士の命を救ったエネルギーが僕の心にも届いてきたような気がしたんです。

 木から下りた後、佐次田さんは2年間ぐらい捕虜になり、自分の島に帰ってきて息子さんと再会できたのはその後です。そして、「自分たちを守ってくれた木を一緒に見に行こう」と、息子さんを連れて伊江島まで行きました。つらい思いをして2年間過ごした木に、また登ろうという気持ちには普通はならない、もう二度と見たくないもののはずなのに……佐次田さんにとってあのガジュマルの木は、それぐらい大事な木だったんです。木の前に立ったときに、佐次田さんは「まぶしい」と言ったんですって。

 今回僕たちが演じるのは、とても残酷で悲惨な2年間です。でも、佐次田さんが久しぶりにその木と再会したとき「この木が僕たちを守ってくれた」と思えたということは、木に対してどこかで希望みたいなものを感じていたわけじゃないですか。だから、「まぶしい」と言ったのだと思うんです。

 2時間のお芝居の中で悲惨さだけじゃなくて、少しの希望も感じていただきたいですね。栗山さんや蓬莱さんが「71年前から何も変わっていない沖縄を描く必要がある」とおっしゃっているように、この作品には根深く重いテーマがあります。でも、それにプラスして、木が「まぶしい」とおっしゃった佐次田さんの思い、その息吹はどこかに入れなくちゃいけないと思いました。

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