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特集 (1)視覚、聴覚だけでなく、触覚でも体感

2016年11月14日更新
写真:「ミス・サイゴン」公演から=東宝演劇部提供 「ミス・サイゴン」公演から=東宝演劇部提供

 アメリカへ渡り豊かに暮らす夢を見ながらG.I.を相手にナイトクラブを営むエンジニア、爆撃で故郷の村と両親を失った少女キム、アメリカ兵のクリスを中心に物語ははじまる。

 ベトナム戦争末期、エンジニアに拾われたキムの初めての客は、長引く戦争で虚無感にさいなまれていたクリス。一夜を共にしたふたりは互いの中に救いを見いだし、恋に落ちる。幸せなふたりの前に、キムの婚約者でベトコンのトゥイが現れ、キムが敵兵と一緒にいることに激怒し、アメリカの敗北は近いと言い捨てて去っていく。クリスはキムを国へ連れて帰ると決めるが、サイゴン陥落はすぐそこに迫っていた。

 戦争が終わり、社会主義国家となったベトナム。収容所で再教育を受けていたエンジニアは、人民委員長となったトゥイの前に引き出され、キムを探すように命じられる。キムはクリスとの再会を信じながら難民キャンプに身を潜めていた。しかし、帰還したアメリカで今もベトナムの悪夢に苦しむクリスの傍らには、献身的に支える妻エレンの姿があった。エンジニアの手引きでキムに再会したトゥイは結婚を迫るが、キムはかたくなに拒み、クリスとの息子タムの存在を明らかにする。逆上したトゥイに我が子を殺されそうになり、キムは彼を撃ち殺してしまう。彼女の頼る先はエンジニアしかなかった。混血のタムは、アメリカ行きの夢を捨てられないエンジニアにとっては入国許可証も同然に映る。エンジニアと共に、キム母子は難民の群れに紛れ国境を越えていく……。(公式パンフレットから)

 兵士たちの息抜きの場ナイトクラブの退廃と夢、社会主義国家建国3周年を祝うホーチミン(旧サイゴン)の式典を描く場面の重い異質感、エンジニアが「アメリカンドリーム」を歌う場面の虚構のきらびやかさなど、戦争の悲惨さを描きながらも社会背景や人間の欲、夢などが鮮明に描かれている。

 物語の後半でキムとクリスが離れてしまった理由が明かされる。「ミス・サイゴン」の見せ場のひとつだ。ベトナム陥落の時がせまり、アメリカ兵の脱出用ヘリが舞台上に登場すると、客席には上空からリアルに風が吹き下ろす。視覚、聴覚だけでなく、触覚でも体感できるまれな場面だ。

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