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11月の東京・日比谷は、晩秋にもかかわらず桜の花が舞っているかのようだ。星組トップスター北翔海莉のサヨナラ公演が行われているのだ。その「桜華に舞え」は、戊辰戦争で活躍し西南戦争で散った桐野利秋(中村半次郎)という人物にスポットを当てている。めくるめくスピード感が心地良い舞台である。
桐野の幼なじみであり、やがて別々の道を歩むこととなる衣波隼太郎を次期トップスターとなる紅ゆずるが演じ、桐野が命を助け、やがて心を通い合わせることとなる敵方会津藩の娘・大谷吹優を、北翔と共に退団するトップ娘役・妃海風が演じている。そして、北翔の同期であり、同時退団する美城れんが西郷隆盛を演じるなど、いかにもタカラヅカらしい見どころも多く、客席では多くの人が涙した。
だが、今回の作品、タカラヅカでもこれまで数々上演されてきた幕末物とどこか違う。そしてその異色感が、北翔海莉というトップスターの他に類を見ない魅力と、分かち難く結びついている気がするのだ。
《筆者プロフィール》中本千晶 フリージャーナリスト。宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で鋭く分析し続けている。主な著作に『宝塚読本』(文春文庫)、『なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか』(小学館新書)、『タカラヅカ流世界史』『タカラヅカ流日本史』『宝塚歌劇は「愛」をどう描いてきたか』(東京堂出版)など。2016年10月に『宝塚歌劇に誘う7つの扉』(東京堂出版)を出版。NHK文化センター講師、早稲田大学非常勤講師。