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特集 (2)どこか異彩を放つ「桜華に舞え」

2016年11月24日更新

 こうした過去の幕末物と比べても、「桜華に舞え」はどこか異彩を放っている。何が違うのか? それは次の3点にあるのではないかと思う。

 その1)維新ではなく「維新後」

 幕末物のクライマックスといえば何といっても大政奉還、そして戊辰戦争へのくだりである。タカラヅカでも、その前後のドラマが描かれることが多かった。だが「桜華に舞え」での戊辰戦争は冒頭の回想シーンに過ぎない。むしろ、ドラマの中心に据えられるのは「維新後」に生じたゆがみである。維新に華々しく散った者ではない、もっと後の、いわば「時代の敗者」とでも言うべき存在に光を当てている。

 その2)メジャーでなくマイナー

 また、これまでの作品では坂本竜馬や沖田総司といった、今なお歴女に大人気のスターというべき有名人が主人公となることが多かった。また、主人公を取り巻く主要キャストも、名前は誰もが知っているような人物がそろうことが多かった。

 ところが今回の主人公の桐野利秋という人物、歴史マニアは別として、多くの人はこれまで名前も聞いたことがなかったのではないか? それ以外の登場人物も、メジャーどころは少ない。この物語は、維新に翻弄(ほんろう)された無名の人々の物語でもあるのだ。

 その3)帝都でなく地方

 そして物語の舞台もほとんど鹿児島であり、セリフでも鹿児島弁が徹底して使われている。決めゼリフ「泣こかい 飛ぼかい 泣こよかひっ飛べ!」も古くから鹿児島に伝わる言葉で、「泣いているくらいなら、思い切って飛んでしまえ」という意味なのだそうだ。

 これは「わかりにくい」と賛否両論もあったが、「国の中枢たる帝都の話ではない」ことを強烈に印象付けたという点ではとても効果的だったと思う。また、これを違和感なく見せた星組メンバーの努力には拍手を送りたい。

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