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特集 (3)極限状態での人間の本性と、一筋の希望と

2016年11月25日更新
写真:「木の上の軍隊」公演から=谷古宇正彦撮影 「木の上の軍隊」公演から=谷古宇正彦撮影

 「木の上の軍隊」は、一面では沖縄問題にフォーカスした作品である。だが、その枠を超えて「一番恐ろしいのは何よりも人の心ではないか」との思いにもかられる。極限状態の中で露呈する人間の醜い本性が、この作品ではこれでもかと言わんばかりにさらされる。

 しかし、同時に思うのだ。互いに殺意を抱くところまで憎しみあいながら、それでも2人とも生き残ったではないか、と。そこに一筋の希望がある。最後に新兵が絞り出すかのように言う「信じるしかない」という言葉がとても、とても重い。それは、沖縄の人々の心の声のようにも思えるが、結局のところ人が最終的にたどり着かざるを得ない言葉のようでもある。

 ラストで垂直に立ち上がっていくガジュマルの木が、まるで十字架のように見えた。2人はあの後、世間からどのように裁かれたのだろう? 私は、彼らを許したいと思う。

 ところで終演直後、なぜ私は言葉を失ってしまったのだろう。時間が経って落ち着いてから、もう一度考えてみた。それは、人間の両極を一気に見せつけられた衝撃のためではなかったか。そこで、こざかしい公演評など書いてはいけない、書けない……。そんな自制心が働いてしまったのかもしれない。

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◆こまつ座 第115回公演「木の上の軍隊」
《東京公演》2016年11月10日(木)~27日(日) 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://www.komatsuza.co.jp/

★「木の上の軍隊」スペシャルイベント
〈アフタートークショー・井上麻矢、普天間かおり〉11月26日(土)18:30公演後
※詳細は公式ホームページでご確認ください。

《筆者プロフィール》中本千晶 フリージャーナリスト。宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で鋭く分析し続けている。主な著作に『宝塚読本』(文春文庫)、『なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか』(小学館新書)、『タカラヅカ流世界史』『タカラヅカ流日本史』『宝塚歌劇は「愛」をどう描いてきたか』(東京堂出版)など。2016年10月に『宝塚歌劇に誘う7つの扉』(東京堂出版)を出版。NHK文化センター講師、早稲田大学非常勤講師。

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