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特集(2)原作と一番違うのは、じつはパリス伯爵

2011年3月29日

 いっぽうで、主な登場人物については独自の味付けがなされている。主人公のロミオからして、原作とは少し違っている。原作のロミオは、ジュリエットに出会う直前まで、ロザラインという別の女性に夢中だったのだ。

 恋の病に打ちしおれているロミオを励ますために、親友のベンヴォーリオがキャピュレット家の舞踏会にロミオを誘い、そこでジュリエットに一目ぼれしてしまったというわけ。その点、今回のロミオは、たんぽぽの綿毛をふっと吹くのが似合う「オクテ」な純情男子として描かれていて、タカラヅカの舞台にぴったり。

 かたやジュリエットのほうは、複雑な家庭事情がいかにも現代的だ。父親は金と女にだらしないダメ男で、夫に愛想をつかした母親は、甥のティボルトと恋の火遊び中。いかにも子どももグレてしまいそうな家庭だ。幸い、乳母のおかげでスクスクと真っ直ぐ育ったジュリエットだからこそ、よけいに真実の愛に強い憧れを持ってしまうということだろう。もちろん原作にこんな設定はなく、ごく普通の名家のお嬢様である。

 ティボルトに至っては、「剣の達人」というところだけは原作を踏襲しているが、それ以外はもう完璧にイマドキの若者である。ジュリエットへの妄想で頭がいっぱい、折れそうな心を持て余し、今にもキレてどこぞの街でナイフを振り回しそうなティボルトだ。

(とくに星組版の凰稀かなめのティボルトがそうだった。雪組版の緒月遠麻のティボルトはもう少し実直でオトナのティボルトだった)。

 原作ではマーキューシオに比べていまひとつ存在感の薄いベンヴォーリオにも、ちゃんと見せ場がつくられている。原作でジュリエットの死をロミオに伝えるのは、バルサザーというロミオの従者。この役割をあえて、モンタギューの3人組のなかでも一番大人で分別もあるベンヴォーリオに担わせるところが、舞台版ならではの面白さだ。あの後、ベンヴォーリオは自分がやってしまったことを、どう受け止めて生きていったんだろうと、思わず考えさせられてしまう。

 原作と最も違うのは、じつはパリス伯爵だろう。今回は、おとぼけキャラで、悲劇の合間に観客にほっと一息つかせてくれる癒し系の存在。ところが、原作によると、家柄も良く金持ちなうえに、たいへんな男前。ジュリエットでさえ、
「(パリスを)好きになってみましょう、見て好きになれるものなら」
と、最初はまんざらでもなさそうな様子なのだ。

 しかもこのパリス伯爵、最後には、死んでしまったジュリエットに花を手向けようとしたところを、ロミオの手にかかって殺されてしまう。原作ではパリス伯爵もまた、両家の「憎しみ」の犠牲者のひとりなのだった。

(…やはり、二枚目を待ち受けるのは悲劇的な最期しかないようだ。タカラヅカ版のパリスは死ななくてよかった…)

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