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特集(1)原作はプーシキン「大尉の娘」

2011年5月18日

 「黒い瞳」の原作は、プーシキンの小説「大尉の娘」だ。1773年、当時権力を確立しつつあった女帝エカテリーナII世に対するコサックの反乱、「プガチョフの乱」が起こったことは、世界史の授業でもおなじみ。

 「大尉の娘」は、プガチョフの乱を題材に取った歴史小説だ。田舎貴族の息子で、とある地方の軍隊に入隊してきたニコライ(原作ではピョートル・音月桂)が、入隊先の司令官=大尉の娘マーシャ(舞羽美海)と出会って恋を知り、不思議な縁から反逆者プガチョフ(未涼亜希)と奇妙な友情を結ぶ。貴族の息子らしい人の良さと高潔さを併せ持つニコライ役は、昨年末に雪組のトップスターとして新たなスタートを切った音月桂にぴったりだった。

 タカラヅカでは、物語をさらにドラマチックに盛り上げるために、「マーシャが実は大尉の本当の娘ではなく、コサックの子だった」という設定が加えてある。当時はコサックの娘と貴族の息子との結婚は難しかったから、愛の障壁がより高まる。自分が身を引いてもニコライの命を助けたいというマーシャの献身ぶりや、そんな2人の結婚を許すエカテリーナII世(晴華みどり)の懐の深さがより際立つというわけだ。それ以外の部分は、おおむね原作小説に忠実に物語はすすんでいく。

 ちなみに、小説によると、ニコライの実家は300人もの農奴がいる大地主らしい。印象的だったのが、小説の書き出しだ。プガチョフの乱から60年後の1833年、すでに老人となったニコライが、孫に対して昔話を語りだす形式で始まっている。

 そのまえがきから察するに、どうやらニコライはこの物語の後、マーシャと幸せな家庭を築き、そこそこの成功も勝ち得て、子や孫にも恵まれ、世間的には「平凡だが幸せな」人生を送ったらしい。

 そのニコライとプガチョフ、真逆の生き方をする二人が偶然出会い、当時の「普通の人」視点でプガチョフという人物が描かれているところが、この物語の面白いところだ。

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