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特集(3)現れる時代性

2011年5月18日

 さて、プーシキンに縁のある雪組だが、それぞれの主人公のキャラクターが、「黒い瞳」と「オネーギン」ではまったく対照的なのが興味深い。

 「黒い瞳」のニコライは、女帝エカテリーナの全盛期に青年期を過ごしており、皇帝に対して純粋な忠誠心を持っている。歴史に足跡を残す人物(プガチョフ)に出会いながらも、「それはそれ」として、あまり悩むこともなく体制に順応して人生を歩むタイプだ。

 それより少し後の時代を生きたオネーギンは、無力な自分を諦め、享楽的な青春時代を過ごしている。タカラヅカ版ではさらに、ロシアの遅れた専制政治に疑問を抱く少年オネーギンの姿や、タチヤーナとの恋に破れ、最後は革命派の一員として、「デカブリストの乱」(1825年12月)へと身を投じていく姿も描かれた。

 プーシキン自身が生まれたのは1799年だから、プガチョフの乱の収束から20数年後だ。プーシキンはこの時代に強い関心を示し、多くの調査や取材を行った。もしかして、聞き取り調査のなかでニコライのような青年時代を過ごした老人と出会い、「あの頃はのう」という昔語りを聞いたのかもしれない。

 そして、「オネーギン」執筆の最中に、ロシアの青年将校たちによる早すぎた革命「デカブリストの乱」が起こっており、プーシキン自身も関わりがあったとされる。タカラヅカ版では、作者プーシキン自身(緒月遠麻)も登場するが、オネーギンはまさにプーシキンと同時代を生きた主人公であった。

 おそらく、この時代のロシアは過去の栄光の時代に甘い蜜を吸った老人と、時代に絶望する若者とが混在していたのではないだろうか。ちょうど、高度成長期、そしてバブル期にいい思いをした大人と、未来に希望の持てない若者が混在する今の日本のように。

 その後、1917年にロシア革命が成功してロマノフ王朝は滅亡、レーニン、スターリンによる社会主義国家「ソビエト連邦」が誕生する。「ニジンスキー」の時代は、まさに革命前夜。文化は爛熟しきっているが国内は混乱を極めていた。そんな背景のなか、ディアギレフは祖国を離れ、パリでロシアバレエ団の公演を行ったのだ。

 「革命20周年」を祝う場面で始まる「ロシアン・ブルー」は、そのさらに20数年後の1930年代、ソ連邦の絶頂期のお話だ。

 こうして作品を振り返ると、馴染みの薄いロシアという国の変化がわかりやすい。世界史選択でロシアが苦手な受験生の皆さん、ぜひお試しアレ。

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