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特集【公演評】11人いる!
手に汗握るSF青春群像劇

2013年1月17日
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 萩尾望都の名作SFコミックをスタジオライフが完全舞台化した「11人いる!」が、1月10日より東京・紀伊國屋ホールにて上演中だ。2011年2月に続いての再演となる今回は、日本の演劇人を育てるプロジェクト「新進演劇人育成公演」とあって新進俳優を多数起用。勢いとエネルギーがほとばしる若手と、後輩たちをがっちり支えるベテランの化学反応が功を奏し、スリリングなSF青春群像劇に仕上がっている。(フリーライター・岩橋朝美)

 「11人いる!」は、宇宙大学入学のため、さまざまな星からやってきた受験生たちが、外部との接触を断たれた宇宙船内で53日間に及ぶ最終試験に臨むというストーリー。試験開始早々に1チーム10人のはずがなぜか船内には11人いることがわかり、彼らは互いに誰が11人目なのかと疑心暗鬼にとらわれる。なかでも、「直観力」を持つタダトス・レーン(通称タダ)は、初めて乗船したはずの宇宙船の内部に詳しいことから、マヤ王バセスカ(通称王さま)から疑念を抱かれてしまう。そんななか、船内では次々とトラブルが勃発、彼らは反目しながらも助け合い危機を乗り越えていくが……。

 密室空間の宇宙船内で、登場人物たちに次々と試練が襲う展開がスピーディーで飽きさせない。次第に信頼関係が築かれるものの、「11人目の異分子」の存在が絶えず緊張感を生み、生きるか死ぬかの状況で追い詰められた彼らを犯人捜しへと駆り立てていくさまは、役者陣の力演もあり手に汗握る。ストーリーを知らずに観れば11人目は誰なのか?というミステリー要素にグイグイと引き込まれ、筆者のように11人目を知る原作ファンには随所に張られた伏線が楽しい。「11人目」が要所要所で細かく表情を作っているので、時折クスリとさせられることもあった。

 また、本作はSFミステリーであるとともに、バックボーンの異なる11人の若者が互いを認め友情を育んでいく青春群像劇としても秀逸。疑惑の目にさらされながらも常に誠実であろうとするタダ、女性のような風貌ながらやんちゃな性格のフロルベリチェリ・フロル(通称フロル)、王としての威厳とともに若さゆえの視野の狭さも持ち合わせる王さま、11人の中でもっとも大人で懐の深い短命種族のガニガス・ガグトス(通称ガンガ)など、原作において個性豊かに描き分けられている11人のキャラクターが、舞台においてもそれぞれの持ち味を生かして魅力を放っているのが勝因だろう。なお、再演にあたって、衣装や髪型が原作にとらわれず、キャラクターに合わせて今風のブルゾンからクラシカルな衣装まで、より幅を出し個性的になった点も評価したい。

 本作はMercuriusチームと、Venusチームの2チームでの入れ替え公演で、筆者はVenusチームを観劇。主人公タダを演じるのは本プロジェクトの育成対象者でもある荒木健太朗。原作よりも幾分熱いキャラクターのタダ像で、台詞や動きやしぐさにスピード感があり、作品に現代的な空気を呼び込んでいたのが印象的だ。また、タダのよき理解者となるフロル役には及川健。華奢で女性のように愛らしいフロルは、彼のための役といっても過言ではないハマリ役。笑いどころもしっかり押さえた演技はベテランのなせる業。主要登場人物がほぼ男性ばかりの「11人いる!」は男性だけの演劇集団スタジオライフの持ち味を生かしやすい題材だ。スタジオライフ初心者にも入りやすい作品ではないだろうか。

 そのほか、若手勢では甘いルックスのソルダム四世ドリカス役の藤森陽太が立ち姿の華やかさで、ヴィドメニール・ヌーム役の鈴木智久とグレン・グロフ役の神野明人が台詞回しの巧みさとキャラクター構築の明確さで目を引いた。その他の若手勢もアクロバティックな動きやコミカルな芝居など、よい意味で若く勢いのある演技が楽しい。ベテラン勢では王さま役の曽世海司、ガンガ役の船戸慎士の風格漂う熱演が光った。若さとベテランががっぷり四つに組んでの演技合戦は、どのような結末を迎えるかわからない登場人物たちにより一層のドライブ感を与えているようにも感じられた。

 また、小劇場では表現が難しい宇宙空間の広大さや、船内で有害植物が大量発生するといったトラブルを、舞台上に設置した円形スクリーンと照明を駆使して表現するなど演出面の工夫も好感が持てた。なお、「11人いる!」は1月20日まで上演され、2月28日からはその続編である「続・11人いる! ―東の地平 西の永遠―」が新たな組み合わせも加えて3チームで上演される。密室空間から一転して、マヤ王バセスカが統治する星アリトスカ・レを舞台に壮大なスケールで展開する政争ドラマを今度はどのように舞台化するのかたいへん興味深い。

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◆「11人いる!」
《東京公演》2013年1月10日(木)〜20日(日) 紀伊國屋ホール

◆「続・11人いる! ―東の地平 西の永遠―」
《東京公演》2013年2月28日(木)〜3月17日(日) 紀伊國屋ホール
《名古屋公演》2013年3月20日(水・祝) 名鉄ホール
《東京公演》2013年3月30日(土) かめありリリオホール
《大阪公演》2013年4月6日(土)〜7日(日) サンケイホールブリーゼ
⇒詳しくは、スタジオライフ オフィシャルHPへ http://www.studio-life.com/

《筆者プロフィール》岩橋朝美 フリーエディター、フリーライター。WEBおよび出版を中心に、企画、編集、取材、執筆を行う。エンタテインメント、女性、仕事など、幅広いテーマで活動。

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