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特集【公演評】爆発!MANZAIが止まらない
舞台裏で奮闘する吉本社員を描く

2013年1月18日
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 吉本興業の創業100周年プロジェクトの一つで、月替わりで芝居を行う「吉本百年物語」。シリーズも第10弾まで進み、新春公演「爆発!MANZAIが止まらない」が大阪・なんばグランド花月で上演中だ。1980年代初頭の漫才ブームを題材に、本作では舞台裏で奮闘する吉本社員たちにスポットを当てた。シリーズの中でも、これまでと趣が異なる作品に仕上がっている。(フリーライター・岩瀬春美)

 1980年初期は、上方漫才の激動期だった。それまで関西の名物だった上方漫才が、「花王名人劇場」や「THE MANZAI」などの全国ネットのテレビ番組で放映され、漫才ブームが日本中を席巻した。本作では、そんな時代を作り出していった吉本興業の社員の姿にスポットを当てている。劇中に登場する面々は、当時の社員の典型的なキャラクターを組み合わせて役にしているという。

 新入社員の松井由紀子を演じるのは安達祐実。子役の頃から活躍し続けているベテラン俳優の、求心力はさすがの一言だ。キュートなルックス、大阪弁のせりふ回しもナチュラルに、軽やかに響く声が心地いい。新人らしからぬ言動で笑いを誘うシーンもちらほら。「松ちゃん」の成長記としても観ることができる本作は、安達の一挙一動から目が離せない。

 藤井隆は、舞台などでの弾けた芸風とは打って変わって、本作では一切笑わない役を演じている。藤井が演じる敏腕マネージャー山内係長と、制作部の轟木部長(山崎銀之丞)は、ともに吉本興業の東京進出を目論む。毛色の違う2人のベテラン役者が、アクの強いせりふを発しながら役を演じるからこそ、当時の社員の革新的な動きに説得力が増すように見えた。

 松ちゃんを見守る2人の先輩社員として、川島いずみ(川崎亜沙美)と大久保(中村昌也)がいる。それぞれのやりとりからは、当時の仕事の疾走感が伝わり、仕事の教訓なども語られる。

 筆者がこれまで継続的に「吉本百年物語」の芝居を観てきた中で、ミュージカルやシリアスな演劇などを上演する他の劇場に比べて明らかに違うと感じるのは、客席の反応だ。なんばグランド花月では上演中に、役者に対するコメントをぼそっと口に出してつぶやいたり、面白い場面は大いに笑い、面白くない場面は容赦なくシン…と静まり返るなど、観客の反応がより如実に出ているように感じる。

 そのことを改めて実感したのが、芝居の合間に出てくる「THE MANZAI」のステージだ。オール阪神・巨人、ザ・ぼんち、今いくよ・くるよ、などに扮した若手漫才師たちが、かつてのネタを披露。演者によって、場の空気ががらっと変わっていた。終演後に観客に話を聞いてみると、あのシーンについては「懐かしかった」と笑顔でコメントする人や、「いくよ・くるよは結構面白かったけどね」などと評する人など、当時を知る世代でも反応はさまざまだった。当時の人気ネタを若手が再現するのはチャレンジだが、このステージが観客に育てられる場になるのかもしれない。

 吉本興業のマネージャーたちの奮闘記「爆発!MANZAIが止まらない」。社員を正面きって取り上げることで、裏舞台から当時のブームを振り返ることができる、ユニークな視点の作品。これはまさにネタになる会社、吉本興業ならではの芝居だ。

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◆吉本百年物語1月公演「爆発!MANZAIが止まらない」
2013年1月9日(水)〜29日(火) なんばグランド花月
⇒詳しくは、吉本百年物語公式サイトへ http://www.yoshimoto.co.jp/100th/monogatari/

《筆者プロフィール》岩瀬春美 福井県小浜市出身。人生の大半を米国ですごした曾祖父の日記を読んだことがきっかけでライターを志す。シアトルの日本語情報誌インターン、テクニカルライター等を経て、アサヒ・コム編集部のスタッフとして舞台ページを担当。2012年1月よりフリーランスのライターとして活動。

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