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特集(3)退場した「悶絶婦人」「失神婦人」

2013年1月22日

写真:「ベルサイユのばら ―オスカルとアンドレ編―」よりオスカル役の龍真咲(右)、アンドレ役の明日海りお(左)=撮影・岸隆子

 4名の役替わりが予定されているアンドレだが、チラシやプログラムをみると、その髪型は全員同じだ。というか、再演のたびごとに、アンドレと言えばこの髪型である。「エリザベート」のトート役を演じる人が再演ごとに髪型に工夫を凝らしてくるのとは対照的だ。この他にも台詞の一言一言から、有名なところでは「今宵一夜、アンドレ・グランディエの妻に…」という有名なシーンのオスカルとアンドレのポーズ(これは長谷川一夫の指導だ)に至るまで、とにかく「お約束」が多いらしい。

 そんな中にあって今回も、長年の「ベルばら」名物、あの「悶絶婦人」「失神婦人」の登場がなかった。オスカルが宮廷に登場するシーン。下手から登場するオスカル(ここで、長谷川一夫は「客席の『いの23番』を見よ。そうすれば目の中に星が輝いてみえる」と指導したといわれる)のあまりの凛々しさに、「モンゼット夫人」が「悶絶しそう…」、「シッシーナ夫人」が「失神しそう…」と、それぞれ叫ぶのだ。かつてはオスカル登場時の「お約束」シーンであったが、もはやお笑いを通り越して失笑ものだったので、なくて正直ホッとした。

 単純な場面転換と、カーテン前芝居が多いのも相変わらずだが、カーテン前では主に、登場人物同士の台詞のやりとりをじっくり聞かせたい芝居に絞って行われていたのがよかったと思う。

 「スカーレット ピンパーネル」を経て、もはや民衆による革命シーンは十八番となったタカラヅカ。ベルナールを中心としたパリ民衆のシーンはこれまでにない迫力だ。「スカーレット ピンパーネル」や「ジャン・ルイ・ファージョン」などで、ヅカファンにはおなじみの存在となったロベスピエール(華央あみり)も今回クローズアップされている。いっぽうで、その後の定番、バスチーユ陥落に至る場面のレトロなダンスとは多少のギャップが生まれてしまった気もする。

 そして本公演の目玉は「空飛ぶ馬車」。銃弾に倒れたオスカルとアンドレが、スモークの中からガラスの馬車に乗って登場、天国で結ばれたことを描く、これまたベルばら定番のラストシーンなのだが、今回はこの馬車がクレーンの先に取り付けられ、そこにオスカルとアンドレが乗り込んで、2階席近くまで上がっていくのだ。

 2006年の「ベルばら」ではこのクレーンにペガサスが取り付けられ、オスカル役の朝海ひかるが乗って観客を仰天させた。その姿は少々滑稽でもあったのだが、それに比べると今回はずっと効果的なスペクタクルになっていると思う。その際、劇場の天井いっぱいに銀河を思わせる映像も映し出されるから、2階席からみるとより壮大に感じられるのではないだろうか。

 定番シーンは忠実に踏襲しつつも、全体としてはスッキリと流れが整理され、ところどころに現代風味も取り入れられた2013年「ベルばら」。続いて上演が予定されている「フェルゼン編」はどのように料理されるのかにも注目だ。

◆「ベルサイユのばら ―オスカルとアンドレ編―」
《宝塚大劇場公演》2013年1月1日(火)〜2月4日(月)
⇒詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ http://kageki.hankyu.co.jp/revue/310/index.shtml
《東京宝塚劇場公演》2013年2月15日(金)〜3月24日(日)
⇒詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ http://kageki.hankyu.co.jp/revue/311/index.shtml

《筆者プロフィール》中本千晶 フリージャーナリスト。1967年山口県生まれ。東京大学法学部卒業。株式会社リクルートで海外ツアー販売サイトの立ち上げおよび運営に携わる。2000年に独立。小学校4年生のときに宝塚歌劇を初観劇し「宝塚に入りたい」と思うも、1日で挫折。社会人になって仕事に行き詰まっていたとき、宝塚と再会し、ファンサイトの運営などを熱心に行なう。宝塚の行く末をあたたかく見守り、男性を積極的に観劇に誘う「ヅカナビゲーター」。12年11月に「ヅカファン道」(東京堂出版)を出版。

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