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特集【公演評】アンチ吉本・お笑いレボリューション
ダウンタウン誕生の新時代

2013年2月19日
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 吉本興業創業100周年記念公演として、2012年4月から月替わりで上演してきた「吉本百年物語」シリーズも、残すところあと2作品となった。大阪・なんばグランド花月で上演している2月公演では、「心斎橋筋2丁目劇場」がオープンした頃のお笑いの変革期を描いている。タイトルは「アンチ吉本・お笑いレボリューション」。今や絶大な人気を誇る漫才コンビ、ダウンタウンの無名時代も描かれた興味深い作品だ。(フリーライター・岩瀬春美)

 筆者が中高生の時、クラスで面白い子がいると「あんた、吉本行き」とよく言われていたものだ。その「吉本」とは「吉本総合芸能学院」、通称NSC。吉本興業がお笑い志望の若者を育てる新人養成学校のことで、ダウンタウンはNSC1期生だった。本作ではダウンタウンの駆け出しの頃を、彼らのお笑いの才能を信じて全国区に押し上げた吉本社員の目線から描く。

 漫才ブームが去り、東京から大阪に戻ってきた社員の太田(月亭方正)は、NSC担当となる。社内で中途半端な立場だった太田だが、兄貴分のような存在で若手芸人の世話をしていた。ダウンタウンはNSC卒業後、先輩芸人たちから実力を認められながらも、なかなか芽が出ずにいた。若手を育てるためには新しい場が必要だと感じた太田は1986年、「アンチ花月」「アンチ吉本」を掲げ、若者が集うライブスペース「心斎橋筋2丁目劇場」を作った。演出家の原(小川菜摘)の力も借りて、ダウンタウンを中心とした若手芸人の育成に励む。

 社員の太田役には月亭方正。2013年元旦、方正は落語家として本格的に活動するために「山崎邦正」から改名した。本作では主演を務め、せりふの多い役どころを堅実に演じる。売れないことへのいら立ちを募らせていくダウンタウンの2人に対して、彼らの才能を信じて励ます姿には、人柄がにじみ出ているように見えた。太田役は吉本興業の現社長、大崎洋氏がモデルになっている。

 ダウンタウン役には、松本人志役に俳優の趙タミ和(ちょう・たみやす、タミは王へんに民)、浜田雅功役に間寛平の長男でシンガー・ソングライターの間慎太郎。テレビでベテランの風格漂うダウンタウンに見慣れていると、初めは彼ら2人がダウンタウンに見えづらいのが正直なところ。しかし、芝居の稽古のシーンで2人からは、やさぐれている雰囲気が出ており、「昔はこんな感じだったのかもしれない」とイメージが重なっていった。趙は堂々とした演技で、慎太郎は浜ちゃんが「キレる」場面の熱演が印象的。2人の関係性からは、ダウンタウンの青春時代の匂いがした。実生活で浜田の妻である小川が、若い頃の浜ちゃん(慎太郎)と舞台で対峙するのも興味深い。

 ココリコの遠藤章造が演じる狩野という社員は、他の役にはすべてモデルとなる人物がいる中で、唯一のオリジナルキャラクター。登場の度に「缶コーヒー好き」をアピールする狩野は、くだらなくも、次第にいとおしささえ覚える気がしてくるから不思議だ。くすぐる笑いの遠藤に対して、豪快に笑いを誘うのがワッキー(ペナルティ)演じるNSCのダンスの講師、泉五十四郎。「やったったー」と言ってリズムをとりながら極めて高いテンションで踊り、「お疲れやでー」「我孫子帰るでー」と決まり文句を連呼、濃いキャラクターで会場を大いに沸かせた。

 本作品で最大の見どころは、ダウンタウン主演の「心斎橋筋2丁目物語」が再現されるクライマックス。このシーンに至るまでに、彼らが稽古で何に葛藤し、どう本番まで行きついたのかが丁寧に描かれている。その過程を経てたどり着いた劇中劇。生の芝居と当時の貴重映像が融合した巧みな演出には、当時の彼らの息遣いまで聞こえてくるようなリアルさがあり、思わず息を呑んだ。

 現代のお笑いに転換した時代を描く「アンチ吉本・お笑いレボリューション」。お笑いの第一線で活躍し続けているダウンタウンの原点が分かるのは、この芝居ならでは。当時からのファンはもちろん、友達同志でわいわいと楽しみたい時におすすめの作品だ。

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◆吉本百年物語2月公演「アンチ吉本・お笑いレボリューション」
2013年2月5日(火)〜3月2日(土) なんばグランド花月
⇒詳しくは、吉本百年物語公式サイトへ http://www.yoshimoto.co.jp/100th/monogatari/

《筆者プロフィール》岩瀬春美 福井県小浜市出身。人生の大半を米国ですごした曾祖父の日記を読んだことがきっかけでライターを志す。シアトルの日本語情報誌インターン、テクニカルライター等を経て、アサヒ・コム編集部のスタッフとして舞台ページを担当。2012年1月よりフリーランスのライターとして活動。

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