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特集【公演評】「続・11人いる! ―東の地平 西の永遠―」
陰謀と裏切りの重厚なSFドラマ

2013年3月8日
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 スタジオライフが萩尾望都の同名SFコミックを舞台化した「続・11人いる! ―東の地平 西の永遠―」が、2月28日より東京・紀伊國屋ホールにて上演中だ。2011年に好評を博し、13年1月に再演された「11人いる!」の続編となる本作は、宇宙船内のスリリングな密室劇だった前作から一転、権力闘争や隣国との軋轢、大国の脅威に揺れる小国アリトスカ・レと宇宙空間を舞台に重厚な人間ドラマが展開する。(フリーライター・岩橋朝美)

 過酷な入学試験を突破し、晴れて宇宙大学の学生となったタダトス・レーン(通称タダ)とフロルベリチェリ・フロル(通称フロル)。彼らは、最終試験に合格ののち国へ戻ったマヤ王バセスカに招かれ、彼が統治する小国アリトスカ・レを訪れる。「東の地」という意味を持つアリトスカ・レは、「西の地」の意味を持つ隣国アリトスカ・ラと鉱山の利権を巡り衝突が続いていた。そんななか、穏健派のバセスカに異を唱える急進派の大臣バパがクーデターを起こし、「西の地」へ宣戦布告。反逆罪の汚名を着せられたバセスカはタダらと宇宙大学へ避難するが、2国の争いに便乗して利権を狙う大国ドゥーズの暗躍で、さらなる悲劇が彼らを襲う。

 貧しい小国の政争が隣国との戦争へと発展し、その裏では漁夫の利を狙う大国が糸を引く。SFの世界を借りながら、そこに描かれるのは今も昔も変わらぬ陰謀渦巻く国家間のパワーバランスの危うさと、その主導権を握る者たちが問われる良心、権力者の思惑に抗するすべもなく翻弄される民の姿だ。

 紀伊國屋ホールではMars、Jupiter、Saturnusの3チームのうち、Mars、Jupiterの2チーム編成で上演されており、筆者はJupiterチームの初日を観劇。タダ役の山本芳樹とフロル役の及川健は前作「11人いる!」の初演でも同役を演じており、息の合ったコンビネーションで悲劇的なストーリーにあたたかさとユーモアを添える。前作から引き続き彼らを主役としながらも、ドラマチックな物語の中核を担うのは曽世海司演じる王バセスカ。前半は王としての品格とともにお坊ちゃん的な甘さをも漂わせているのがリアルで、それゆえ臣下の裏切りや友との対峙を通して、真の王としての在り様を模索し悩み、成長していく姿が胸を打つ。

 前作からのキャラクターの中では盟友バセスカと対立することになる、藤森陽太演じるアリトスカ・ラ出身のソルダム四世ドリカス役(通称フォース)が存在感を増した。家族愛と友情を天秤にかけたフォースの苦渋の決断は、原作でも見どころのひとつだが、照明効果も相まって、バセスカ視点で描かれる原作以上に印象的なシーンとなっている。藤森は前作でも際立っていた華のあるルックスとともに、本作では繊細な芝居でも目を引いた。

 また、本作ではフォースの妹チュチュ(関戸博一)、アリトスカ・レを守るマヤの神に仕えるオナ(青木隆敏)ら、女性のキャラクターが物語の鍵を担う。関戸は最初こそ体格のよさがやや気になったが、豊かな感性でチュチュの芯の強さと少女らしい愛らしさを表現。また、青木扮する美女オナの神秘的なたたずまいにも目を奪われた。

 そのほか、バパ大臣を演じた倉本徹がベテランらしい重厚な演技で、前作同様巧みな芝居でグレンを好演した神野明人は、バセスカの愚兄トマノ役でも存在感を放つ。バパ、トマノともクーデターを起こしながらも憎めない人物でもあり、そのあたりのさじ加減が絶妙だ。また、時折登場する宇宙大学の面々には一服の清涼剤のような爽やかさと明るさがあり、前作の青春ドラマ的甘酸っぱさを思い起こさせる。

 本作はアリトスカ・レ、アリトスカ・ラ、宇宙空間、宇宙大学と場面が次々と変わるのだが、それらをセット転換なしに見せきった点にも注目したい。縦いっぱいを使ったセットの天地中央に橋が渡され、上下ともに窓が設置されていて、シーンによっては前公演でも使用された円形のスクリーンが登場する。照明や映像、キャストの配置次第で、時にアリトスカ・レの宮廷内に、時に宇宙空間にと変幻させる演出は、作品にテンポとスケールの大きさを生んでいた。バセスカとチュチュの邂逅シーンはそれらを駆使したハイライトといえるだろう。

 小劇場というハンデを逆手に取った演出アイデアと丁寧な描きこみで、壮大なスケールの物語を見せきった手腕は見事。ほかのチームの公演も見たいと思わせる魅力的な作品だった。

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【「11人いる!」公演評はこちら】

◆「続・11人いる! ―東の地平 西の永遠―」
《東京公演》2013年2月28日(木)〜3月17日(日) 紀伊國屋ホール
《名古屋公演》2013年3月20日(水・祝) 名鉄ホール
《東京公演》2013年3月30日(土) かめありリリオホール
《大阪公演》2013年4月6日(土)〜7日(日) サンケイホールブリーゼ
⇒詳しくは、スタジオライフ オフィシャルHPへ http://www.studio-life.com/

《筆者プロフィール》岩橋朝美 フリーエディター、フリーライター。WEBおよび出版を中心に、企画、編集、取材、執筆を行う。エンタテインメント、女性、仕事など、幅広いテーマで活動。

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