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特集【公演評】サーカスさながらのフレンチ・ミュージカル
日本初上陸「ノートルダム・ド・パリ」を観る

2013年3月22日
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 98年のパリ初演以来、世界15カ国で上演されフレンチ・ミュージカルの先駆的作品となった話題作「ノートルダム・ド・パリ」が日本初上陸中だ。先ほど東京公演が終了し、大阪公演は3月21日〜24日、名古屋公演が4月5日〜7日に行われる。ヴィクトル・ユーゴーの名作小説をもとにした本作は、醜くも心やさしい鐘つき男カジモドが、美しいジプシー娘エスメラルダに献身的な愛を捧げる姿が描かれる。(フリーライター・岩橋朝美)

 ヴィクトル・ユーゴーといえば、現在映画が大ヒット中の「レ・ミゼラブル」でおなじみ。しかし、そこからクラシカルで重厚な舞台を想像すると、幕開け早々にロック、ポップス、ラテンといった情熱的な楽曲と、筋骨隆々のダンサー陣によるアクロバティックなダンスによって見事に裏切られる。シンガーとダンサーが分業制をとるフランスならではのジャンル「スペクタクル・ミュージカル」に属する本作は、歌の名手、ダンスの名手がスキルをぶつけ合うことでパワフルな舞台が成立し、劇場がさながらライブショーのような熱気に包まれるのだ。

 ヨーロッパの人気シンガーソングライターで作曲家のリシャール・コッシアンテによる楽曲は、フレーズの繰り返しを多用し、一度聞いただけで耳に残るナンバーが多い。例えば、物語の語り部を担う吟遊詩人グランゴワールが歌う「カテドラルの時代」は哀切あるメロディーが心地よく、低音から高音へと上りつめていくサビや、転調に次ぐ転調のドラマティックな展開で、観客を一気に物語の世界へと誘う。最近ではフィギュアスケートの羽生結弦選手のフリープログラム曲に使用されているため、耳にしたことのある方も多いだろう。

 また、カジモド、司教フロロ、近衛隊長フェビュスがエスメラルダへの恋心を歌う「ベル(美しき人)」はカジモドのパワフルなハスキーボイス、フロロの深みのあるハイバリトン、フェビュスの明るく高らかなテノールの三人三様の声が贅沢に味わえるだけでなく、それぞれの個性をくっきりと映し出している点に注目。カジモドがもっともストレートな愛を、フェビュスがもっとも自分勝手な愛を歌っており、それゆえ自分を裏切ったことを知らずフェビュスへの変わらぬ愛を宣言するエスメラルダのナンバー「生きる、あなたのために」は美しくも物悲しく響くのだ。

 そんなメインキャラクターを演じるシンガー陣に対し、ときにメインキャラクターの心象風景を、ときに群衆を演じるのがダンサー陣。ノートルダム大聖堂をイメージした一面の壁をロッククライミングのごとく縦横無尽に動きまわり、天井からつるされた鐘にぶら下がりサーカスさながらのパフォーマンスを繰り広げるさまには息を呑む。一般的なミュージカルの域を超えたダンスパフォーマンスは、シルク・ド・ソレイユ「ザイア」マカオ公演を手掛けた演出家&振付家コンビならではだ。

 また、楽曲やダンスの華々しさだけでなく、人間の業を見つめたストーリーも見ごたえ十分。カジモドやエスメラルダはもちろんのこと、神への忠誠心とエスメラルダへの情欲の狭間で苦しみ非道に走るフロロ、婚約者がいながらエスメラルダに言い寄りあっさりと裏切るフェビュスといった、倫理的には許され難いキャラクターの内面をもつぶさに描くことで、実に人間臭いドラマに仕上がっている。

 本作は日本語字幕付きの英語版での上演だが、空間を縦横無尽に使用したパフォーマンスを、字幕を追いながら堪能するのはなかなか至難の業。あらすじをざっと予習し、できるだけパフォーマンスに集中し体感することをお勧めしたい。

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◆「ノートル・ダム・ド・パリ」
《東京公演》2013年2月27日(水)〜3月17日(日) 東急シアターオーブ ※公演は終了しています
《大阪公演》2013年3月21日(木)〜24日(日) 梅田芸術劇場メインホール
《名古屋公演》2013年4月5日(金)〜7日(日) 愛知県芸術劇場大ホール
⇒詳しくは、ノートルダム・ド・パリ オフィシャルHPへ http://www.harmonyjapan.com/ndp2013/

《筆者プロフィール》岩橋朝美 フリーエディター、フリーライター。WEBおよび出版を中心に、企画、編集、取材、執筆を行う。エンタテインメント、女性、仕事など、幅広いテーマで活動。

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