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特集【公演評】テレビのなみだ
静かに優しさがあふれてくる舞台

2013年4月16日
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 放送作家の鈴木おさむがバラエティー番組を作る人達の裏側を描いたエッセー「テレビのなみだ 〜仕事に悩めるあなたへの77話〜」の中のエピソードから生まれた、舞台「テレビのなみだ」が東京グローブ座で上演された。バラエティー番組を作る熱い男たちとその家族の物語だ。主演のバラエィー番組のプロデューサー細野太陽役を劇団ひとり、その妻百合役を西田尚美、新人AD川合月人役を施鐘泰(JONTE)が演じた。仕事に忙しい夫が、妻のがんを知って仕事と家庭の間で思い悩み、「笑い」を届ける仕事で妻を元気づけようとする姿に心打たれる。(フリーライター・岩村美佳)

 舞台は番組制作室、細野の自宅、病院の3カ所のみ。パステル系の背景にまとめたシンプルな空間だ。仕事場は水色系に、自宅はオレンジ系、場の雰囲気にあった色合いが舞台を優しく包み込む。舞台の右上に大きく数字が現れるのだが、この意味にいつ気づくかで作品の見方が変わるのではないだろうか。

 テレビ局でバラエティー番組を制作しているプロデューサーの細野のチームに、出版社を辞めてADになった川合が制作チームに入ってくるところから始まる。深夜番組のゴールデン進出、2時間番組の方向性を検討しているところに、細野の妻、百合から電話が入った。「話したいことがある…」と。打ち合わせも佳境で、ゆっくり話せない細野に百合は「あ、体、気をつけてね…」と電話を切った。この場面を中心に時が過去へ、未来へと移りながら描かれているのだが、ここで舞台右上の数字が生きてくる。物語のキーポイントとなるこの場面は2回あり、同じ数字が現れる。場面ごとに増えたり、減ったりしていた数字は、百合の余命日数だったのだ。百合は子宮がんを煩っていた。太陽は百合を気遣いつつ仕事にも励む。そして百合のアドバイスを生かしながら番組制作をするなかで、「人生に起きた悲しみを笑いに変える」という番組コンセプトが当たり、番組は成功。百合も大喜びで太陽を祝うが、百合の体は弱っていた…。

 悲しく切ないストーリーなのだが、バラエティー番組の制作現場らしく「笑い」たっぷりの作品だ。物語の前半はギアをあげてスピードを出すように、クスッという笑いがだんだん大きくなって爆笑へとつながっていく。しかし後半になると、「笑い」のスピードがだんだんゆるやかになって、静かに優しさがあふれてくる。

 プログラムの鈴木のコメントに「劇団ひとりが主役を引き受けてくれたらやろうと」と書いてあるとおり、まさにハマリ役。劇団ひとりだから成立する舞台だ。実在したプロデューサーを自然でリアルに見せ、観客の心を動かす。西田は人をほっとさせる温かさをもった優しい妻を好演している。JONTEは少年の頃の「ワクワク感」をなくしていない大人を、熱さを持って演じ、また唯一、2人の真実を知る者として、遠くから寄り添うような存在感を見せていた。

 「テレビが好き」な人達が集まって描くストーリーを「舞台」で見せるという、面白い試みだ。私自身、どちらも好きなので興味深く見た。この舞台は、テレビ好きと舞台好きのどちらが見に来るのだろうかとふと考えた。両方が好きという観客は、尚楽しめるだろう。ストーリーの温かさとともに、エンターテインメントの多様性を再認識する作品だ。

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【施鐘泰(JONTE)インタビューはこちら】

◆「テレビのなみだ」
《東京公演》2013年3月26日(火)〜31日(日) 東京グローブ座 ※公演は終了しています

《筆者プロフィール》岩村美佳 フリーフォトグラファー、フリーライター。舞台関係、ファッションなどを中心に撮影してきた経験をいかし、ライターとしても活動している。「目に浮かぶ言葉」を伝えていきたい。

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