マイコンテンツ

ここから本文エリア

特集【公演評】「Dステ」シリーズ「チョンガンネ」
出演者と役自身のエネルギーが化学反応

2013年5月10日
写真

 俳優集団D―BOYS&D2による舞台「Dステ」シリーズ13弾、「チョンガンネ 〜おいしい人生お届けします〜」が東京・本多劇場での上演を終え、5月11、12日に大阪・森ノ宮ピロティホールで上演される。独自の商売哲学とアイデアで成功した八百屋の「実話」を元にしたサクセスストーリーだ。韓国小劇場界でロングランヒットを記録したミュージカル「独身男の八百屋さん」の日本初演だ。劇団「柿喰う客」の中屋敷法仁が演出・訳詞・上演台本を担当した。出演者の持つエネルギーと、演じる役自身が持つエネルギーが化学反応を起こして、何倍にも膨れ上がる。元気を十二分に届けてくれる舞台だ。観客が笑顔で劇場を後にできる、後味のいい作品に仕上がっている。(フリーライター・岩村美佳)

 退屈なサラリーマン生活に悩んでいたテソン(和田正人)は商品よりも楽しさを売ることをモットーに「独身男の八百屋」を経営し始めた。テソンの高校時代の友人ミンソク(牧田哲也)は、一生懸命働くテソンの姿に惹かれ、大企業を辞め「独身男の八百屋」に加わる。さらに、祖母の入院費用を稼ぐ為にホストクラブで働いていたチファン(近江陽一郎)、海外留学経験があり資産家の父親の提案で期間限定で勤めることになったユンミン(三津谷亮)、軍隊を除隊してすぐにやってきたチョルジン(橋本汰斗)が合流。心を込めたおもてなしと歌って踊る楽しい接客スタイルで評判となる。過去の仕事で失敗をしたレポーターのスジン(舞羽美海)は、「独身男の八百屋」のTV取材に訪れる。極度の緊張でまた失敗するのだが、そこで一生懸命に働くテソンにひとめ惚れ、取材と称して足しげく通うようになる。そんなとき、テソンは2号店を開店すると発表するが、彼らはそれぞれの事情で悩んでいた…。

 独身男たちが見せる歌とダンスパフォーマンスは、元気があってハッピーで、これなら客が集まるだろうなと納得の店。また5人のキャラクターがそれぞれに違っていて、面白い。上司部下ではなく、家族なんだという「独身男の八百屋さん」は、リアル家族を思わせる。テソン父、ミンソク母、チファン長男、ユンミン次男、チョルジン三男、とイメージが湧いた。

 リーダーのテソンは、一家を支える父親のよう。家族の行き先を指し示す。ミンソクは男性だけれども、テソンに3人の様子を話して聞かせるなど、家族全体を細やかに見る母親的役割を果たしていた。2号店を任されることになったチファンは、跡継ぎの長男といったところ。後輩の2人に細やかに教える姿は、弟達の面倒をみるようだ。ユンミンは全てを斜めから見て、やる気のない様子だけれども、チファンの危機に手を差し伸べたり、常に周りを見ている様子は兄弟に挟まれる次男を思わせる。そしてチョルジンは元気いっぱいでやる気の固まり。家族皆に愛される末っ子だ。

 和田テソン、牧田ミンソク、近江チファン、三津谷ユンミン、橋本チョルジンは、それぞれにハマリ役で、役そのものに見えてくるほど見事だったが、今回は1回限りの役替わり公演「乱痴気公演」があった。筆者は見ていないが、このハマリ役がどんな風に変わるのだろうかと興味を掻き立てられた。

 舞羽は、幕開きからテンションMAXでスジンを思い切り良く見せる。個性際立つ役が集まって、おもちゃ箱のような、がちゃがちゃしたユニークな空間に、スジンというキャラクターをきちんと立たせ、なおかつうまく溶け込んでいる。脇を支える黒崎ジュンコ(ズボンドズボン)と新良エツ子の歌はさすがの上手さ。何役もこなす達者ぶりもさることながら、2人のハーモニーが歌を立体的に膨らませている。

 スジンがテソンとの恋を妄想する場面が何とも楽しい。妄想の中のテソンや次々に現れる天使たちに劇場中が大爆笑。この場面が作られていく日に稽古場取材をしたが、「こうなるとは…」といった嬉しいサプライズだった。さらに、電話の呼び出し音を役者がそれぞれ口で「トゥルルルル〜」と言って表現。電話をかける側の気持ちを表現した個性豊かな音が面白い。

 エンディングでは色んな方向を向いていた5人が、それぞれの問題を解決して、同じ気持ちでリスタート。彼らの成長とともに、近くで見ていたスジンも自分の課題をクリアして前に進む。野菜のみずみずしさと、登場人物のキラキラした輝きがリンクして、さわやかな思いが残った。

【フォトギャラリーはこちら】

【トピックス記事はこちら】

【稽古場ルポはこちら】

【舞羽美海インタビューはこちら】

◆Dステ13th「チョンガンネ 〜おいしい人生お届けします〜」
《東京公演》2013年4月25日(木)〜5月6日(月・祝) 本多劇場
※公演は終了しています
《大阪公演》2013年5月11日(土)〜12日(日) 森ノ宮ピロティホール
⇒詳しくは、「チョンガンネ 〜おいしい人生お届けします〜」公式サイトへ http://www.watanabepro.co.jp/mypage/artist/dst13_chonganne.html

《筆者プロフィール》岩村美佳 フリーフォトグラファー、フリーライター。舞台関係、ファッションなどを中心に撮影してきた経験をいかし、ライターとしても活動している。「目に浮かぶ言葉」を伝えていきたい。

バックナンバー

宝塚歌劇一覧へ>> 舞台一般一覧へ>> 動画掲載記事一覧へ>> 過去記事一覧へ>>

過去記事一覧へ>>

ページトップへ戻る

Astandについて個人情報著作権利用規約特定商取引会社案内お問い合わせ