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特集【公演評】宝塚バウ「月雲の皇子」
バウ初作品、上田久美子の演出光る

2013年5月10日

 宝塚月組公演のバウ・ロマン「月雲(つきぐも)の皇子(みこ) ―衣通姫(そとおりひめ)伝説より―」が、5月2日、宝塚バウホールで初日を迎えました。古事記や日本書紀に残る一大恋愛叙事詩に、月組のホープ珠城りょうさんがバウホール初主演で挑みます。確かな実力を武器に、2番手役の鳳月杏さんとも絶妙なコンビネーションを見せ、さすが「芝居の月組」と呼ばれるだけの本領を発揮。若手だけの公演とは思えないほど、完成度の高い舞台となりました。(フリーライター・さかせがわ猫丸)

 古事記と日本書紀では結末が異なるという「衣通姫伝説」に、この公演がバウホール初作品となる演出の上田久美子さんが宝塚らしい独自のアレンジを加え、ドラマチックな歴史ロマンに仕上げています。

 時は5世紀。遠飛鳥宮(とおつあすかのみや)では病で倒れた允恭(いんぎょう)天皇に代わって、木梨軽皇子(きなしかるのみこ)と穴穂皇子(あなほのみこ)という2人の皇子が国の整備を進めていた。ともに「安寧の世を創る」という夢を同じくし、力を合わせて歩んできたが、やがて皇位継承を巡り、周囲の思惑が2人の運命をゆるがせ始める…。

 珠城さんはまだ弱冠研6。新人公演を卒業する年にも満たない若さですが、すでに「歌・ダンス・演技の三拍子揃った」と冠をつけたくなるほどの正統派男役です。今回、挑む役は、歌を愛し民を慈しむ心優しい木梨軽皇子。高貴な雰囲気がとてもよく似合っています。弟の穴穂皇子には、こちらも実力派の鳳月さん。兄とは好対照で強い意志を持ち、冷徹な政治力に長けています。

 まったく違うタイプの兄弟という、宝塚の王道なキャラクター設定に思わずくすぐられますが、2人の実力の高さがさらにその役柄の説得力を高めていました。見た目の並びも抜群に合っていて、堂々とした麗しい立ち姿、シャープなダンス、聴かせるデュエットと、いずれもあまりにレベルが高く、本当にバウ初主演?と、疑いたくなるほど。

 そして妹の衣通姫に、咲妃みゆさん。巫女である衣通姫には、たとえ兄であっても男と話してはいけないという掟があり、沈黙の演技が続きますが、静かな中でも凜とした品格を漂わせています。血のつながらない2人の兄との間に流れる、密やかでかすかな恋の気配も見どころでしょう。

 また今公演では、琴音和葉さん、白雪さち花さん、輝月ゆうまさんらが重厚な年配者の役を巧みに演じていることが全体のクオリティーをさらに引き上げ、見ごたえのあるお芝居を作り上げていました。

 Wデビューとなった珠城さんと演出の上田さん。ともに想像していた以上の素晴らしさで、感動の余韻は数日間にわたり、おさまりませんでした。フレッシュで上質な作品を、若さと可能性に満ちた生徒が演じる。そんな贅沢な時間と出会えたことに、思わず感謝した公演でした。

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◆「月雲の皇子 ―衣通姫伝説より―」
《宝塚バウホール公演》2013年5月2日(木)〜5月12日(日)
⇒詳しくは、宝塚歌劇団公演案内へ http://kageki.hankyu.co.jp/revue/328/index.shtml

《筆者プロフィール》さかせがわ猫丸 大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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