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特集(1)珠城、バウ初主演とはとても思えない

2013年5月10日

写真:「月雲の皇子 ―衣通姫伝説より―」より「月雲の皇子 ―衣通姫伝説より―」より、木梨軽皇子役の珠城りょう=撮影・岸隆子

 今作品の原作となった「衣通姫伝説」は、古事記と日本書紀に出てくる話がベースになっています。古事記と日本書紀では木梨軽皇子と妹との許されぬ恋、皇位を継ぐ弟の穴穂皇子、という関係性は共通でありながら、その結末は古事記と日本書紀ではまったく異なるのだそう。けれど、その確たる史実がないことを利点にし、演出の上田久美子さんが、そこへ宝塚らしいアレンジを加えました。各地の風土記に残る古代の民「土蜘蛛(土雲)」たちを加えた独自の世界観で、壮大な歴史ロマンあふれる作品に仕上げ、女性演出家ならではの繊細な魅力も随所にちりばめています。

 幕開きは暗く静かな海を背景に、古事記における「衣通姫伝説」のあらすじが老女の声で語られます。夏月都さんの落ち着いた語りは耳に優しく、劇場の時間がゆっくりと何千年もの時をさかのぼっていくよう。登場する人物の名前が難しいため、すべてを耳で理解するのは難しいのですが、おぼろげなイメージさえつかめれば大丈夫。物語のラストでもう一度繰り返されるこのあらすじが、その時には違った印象で深く心に沁み入る不思議な感覚が味わえるでしょう。

 ―大和が国として形を取り始めた5世紀頃。遠飛鳥宮では、闘病中の允恭天皇に代わり、木梨軽皇子(珠城)と穴穂皇子(鳳月)の兄弟が、国家の整備と、大和に従わない異端の民「土蜘蛛」たちの征討を進めていた。歌を愛し民を慈しむ木梨軽皇子と、武芸に秀で冷徹な政治感覚を持つ弟の穴穂皇子。まったく対照的な2人だったが、幼い頃から仲が良く、ともに「安寧の世を創る」という夢を持っていた。

 大和の国で兄弟の皇子といえば、名作「あかねさす紫の花」を彷彿とさせますが、あの雅やかな空気が今回も舞台いっぱいに広がり、登場する兄弟の麗しさに胸が躍りました。あでやかな古代の着物にロングブーツの和洋折衷感も宝塚ならでは。同じ和物でも時代によってスタイルはずいぶん異なりますが、この時代の衣装は特に男役の凛々しさが引き立つような気がします。

 木梨軽皇子役の珠城さんは、172センチという身長以上に大きく見え、落ち着いた佇まいが頼もしく、これがバウ初主演とはとても思えません。穴穂皇子の鳳月さんも、圧倒されるほど目力が強く、2人の並びは相性抜群。良くとおるセリフの声に、舞いや立ち回りなどの動きはもちろん、デュエットも素晴らしくて、冒頭から圧倒されっぱなし。ともに実力には定評があると知ってはいたものの、想像以上の完成度でした。

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