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特集【公演評】OSK「シルバーローズ」
はつらつ、若い世代の新たな風

2013年5月24日
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 OSK日本歌劇団の若手を中心とした公演「SILVER ROSE(シルバーローズ) 〜天使の恋人〜」がこのほど、大阪・ABCホールで行われた。若手男役スター、真麻里都が主演をつとめたミュージカル。OSKの将来を担う若手たちが、真麻を中心として、はつらつとパフォーマンスを繰り広げる姿はみずみずしく、次世代の新たな風を感じさせてくれた公演だった。(フリーライター・岩瀬春美)

 男役トップスター桜花昇ぼるを中心として、高世麻央と桐生麻耶の3枚看板で知られるOSKだが、本作では劇団をけん引する3人は出ていない。若手の劇団員が中心となった公演で、ミュージカルとショーの2部構成になっている。

 1部のミュージカル「シルバーローズ」は、キャストと同世代のRi−yaが作・演出を手掛けたオリジナル作品。少女漫画に出てきそうなキャラクターの個性が際立っていた。登場人物は、天使学校の生徒役に真麻里都や華月奏ら、悪魔学校の生徒役に恋羽みうや香月蓮らがそれぞれ4人ずつ配され、人間界の少女役に城月れい、そして本作で初舞台を踏んだ89期生7名が出演。

 物語は、天上界と人間界をまたいで繰り広げられる。天使学校と悪魔学校の生徒たちが、天使は人を幸せに、悪魔は不幸にするという卒業試験の課題を与えられ、人間界に降り立ち、善と悪を仕掛ける。しかし、マリア(城月)がターゲットになると、状況は一変。ミカエル(真麻)は勝負を放棄してしまう。じつはマリアはミカエルの婚約者だった。3年前、ミカエルは不慮の事故に遭い、他界。恋人の突然の死を未だ受け入れられずにいるマリアを、天使になったミカエルはそっと見守り続けてきた。ターゲットにマリアを選んだのはリリス(恋羽)の仕業で、彼女もじつはミカエルに恋心を抱いていた。

 舞台では、天使と悪魔の対比が目で見て楽しい。白の衣装を身にまとった天使と、ゴスロリ(ゴシックロリータ)調のポップなイメージの悪魔。天使は足を閉じて姿勢を正し、悪魔は姿勢を崩してワルっぽく。座り方ひとつとっても、タイプの違いが明らかだ。とりわけ目を引いたのが、天使と悪魔が人間を操るシーン。人間の背後に立って、天使が幸福、悪魔が不幸を導くように言動を操るのだが、口の動きまでもぴったりと合わせていたのが見事だった。

 真麻が演じる天使ミカエルは、さわやかでピュア。対するリリス役の恋羽は、キュートでいじらしい悪魔。彼女は、悪魔というには可愛らしすぎるような気もしたが、それがこのミュージカルのポップな世界観にも通じているのかもしれない。マリア役の城月は深みのある歌声と演技で、今は亡き恋人を思い続ける悲哀を表現。本作では、この3人の恋物語を軸に展開していく。

 だが、実のところ、誰の恋も成就しない。ミカエルへの思いをひた隠しにして、2人の願いを叶えるための決断をしたリリス。住む世界が変わっても互いに思い続けていたミカエルとマリア。タイトルにある「シルバーローズ」とは、永遠に枯れることがない花だという。ミカエルは言う。「僕は君の心の中で生きていける、顔を上げて歩き出すんだ」と。2人に必要だったのは、現実を受け入れて、きちんとさよならをすることだった。ともすれば重くなりがちな場面だが、ここでは真麻の愛らしい笑顔に、悲しみを昇華させるような力が感じられた。

 それぞれの人生の旅立ちは、切なくもすがすがしい。それは、自分の心にけじめをつけているから。「顔を上げて歩き出す」というメッセージは、観客一人一人へのエールのように聞こえた。そして、解散などのさまざまな苦難を乗り越え、劇団創立91周年を迎えたOSKの、未来への意志のようにも受け取れた。

 2部のショー「The Festival」は、2012年12月からの2カ月間、大阪・心斎橋の「オ・セイリュウ」で披露された作品の改訂版。趣向の異なる全14曲が、ダンスとともに次々と繰り広げられる。

 恋羽と城月が、真麻を自分のものにしようと色気で仕掛けていく「I Gotcha」は、思わず息をのむ魅惑的なパフォーマンスだった。足の付け根あたりまで深くスリットの入ったドレスを身にまとい、吐息のような歌い方をしながら、真麻に近寄る2人。ときに競うように激しく絡み、ときにすり寄るように。妖艶で、大胆なその身体表現は、女豹をほうふつとさせる。対する真麻は、彼女たちを受け入れるのか、拒むのか、ぎりぎりのところでひらりと身をかわしていく。少ない動きの中で、キレが半端ない。

 フィナーレは、純白の衣装に身を包んだキャストが登場。「Every body’s Feel」では、聖堂にいるかのような響きで、澄んだ歌声が重なり合う。静ひつな余韻を残したまま、ベートーベンの「歓喜の歌」のメロディーが始まり、「希望のうた」へ。キャスト全員が満面の笑みを浮かべながら、未来への希望を力強く歌った。

 今回初めてOSKの舞台を観たという18歳の女の子は、「笑顔がうつってきました」と目を輝かせて語っていた。1幕2幕ともに、若手にぴったりのみずみずしい作品。昨年、創立90周年の節目を経たOSK。新たな100年に向かうOSK日本歌劇団の「これから」が、楽しみに思えた公演だった。

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◆「SILVER ROSE 〜天使の恋人〜」
《大阪公演》2013年5月17日(金)〜19日(日) ABCホール
※公演は終了しています

◆「MOUSTACHE/ファム・ファタール」
《大阪公演》2013年6月13日(木)〜23日(日) 大丸心斎橋劇場
⇒詳しくは、OSK日本歌劇団、公演イベント情報のページへ 6月大丸心斎橋劇場公演「MOUSTACHE/ファム・ファタール」

《筆者プロフィール》岩瀬春美 福井県小浜市出身。人生の大半を米国ですごした曾祖父の日記を読んだことがきっかけでライターを志す。シアトルの日本語情報誌インターン、テクニカルライター等を経て、アサヒ・コム編集部のスタッフとして舞台ページを担当。2012年1月よりフリーランスのライターとして活動。

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