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特集【公演評】ブロードウェイミュージカル「HAIR (ヘアー)」
熱狂に身を任せて“感じる”舞台「HAIR」

2013年6月3日
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 1967年に誕生し、後に「コーラスライン」や「RENT」などに影響を与えた伝説的ロック・ミュージカル「HAIR」。2007年の40周年記念コンサートの開催をきっかけにリバイバル上演され、09年トニー賞ではリバイバル・ミュージカル部門最優秀作品賞に輝いた話題作が、6月9日まで東急シアターオーブにて上演中だ。(フリーライター・岩橋朝美)

 舞台は、ベトナム戦争ただなかの60年代のアメリカ、ニューヨークのイーストビレッジ。高校をドロップアウトしたバーガー、反戦運動に熱心なニューヨーク大学の学生シーラら、戦争や政治に疑問を抱く若者たちがどこからともなく集まり、自由を謳歌して生きようとしている。しかし、そんななか、仲間のひとりのクロードに召集令状が届き、彼らの間に波紋が広がっていく。

 「HAIR」は、ベトナム戦争がアメリカ社会に影を落とす中、若者たちが主導して一大ムーブメントを巻き起こしたヒッピー文化を、当時の熱狂さながらに伝えるミュージカルだ。幕開け早々、当時を象徴するフォークロアファッションに身を包んだ役者たちがステージはもちろん、観客席までも縦横無尽に動き回り、踊り、歌い、ときに観客の手をとり、舞台と客席の垣根を取り払っていく。

 こうした観客巻き込み型の演出や、肌の露出、セックス、ドラッグといった過激な要素があふれるステージは実に生々しく刺激的で、観客が平静な傍観者でいることを許さない。以前にミロス・フォアマンによる映画版を見ている私も最初は少々面食らったので、まったくの初見の人は驚くかもしれない。しかし、あふれる刺激に戸惑いや驚きを感じながらも、彼らの歌に体が反応し、次いで心が反応していくというその過程を味わうことこそが「HAIR」の面白さだ。

 その原動力であり、作品の最大の魅力が「捨て曲なし」といわれる楽曲群だ。一幕では、彼らが新時代の到来を歌う壮大な「Aquarius(アクエリアス)」、美しいメロディとセクシャルな歌詞の差がユニークな「Sodomy(ソドミー)」などを経て、自由の象徴である彼らのロングヘアーについて歌うパワフルなロック・ミュージック「Hair(ヘアー)」で一気に盛り上がる。それまで、やや硬さのあった劇場内が熱を帯び、拍手が鳴りやまずショーストップとなる、あの一体感は感動ものだ。

 一方で、徴兵を拒否すべきか、親の期待に応えて入隊すべきか苦悩するクロードのナンバー「Where Do I Go(ウェア・ドゥ・アイ・ゴー)」には、あるヒッピーの青年の心情を越えて、いつの時代にも直面する「自分はどう生きるべきか」という普遍的な問いと、戦争に翻弄される若者の葛藤に胸を打たれる。また、二幕も、白人と黒人の女性トリオが自由な恋愛をポップに歌う「Black Boys(ブラック・ボーイズ)」「White Boys(ホワイト・ボーイズ)」をはじめ、聴きどころは枚挙にいとまがない。また、原始的なエネルギーに満ちたダンスや、サイケデリックな色調の照明も見どころだ。

 カーテンコールでは、観客もステージに上がり、役者と観客、ステージと客席が一体となって踊り、熱狂と感動のさなかにエンディングを迎える。当時の若者たちが追った夢、彼らが受けた傷を体と心で感じ、追体験しながら、40年以上を経ても戦争がなくならない現実について考えさせられる「HAIR」。ぜひ、その“熱”を劇場で体感してほしい。

【写真】ブロードウェイミュージカル「HAIR(ヘアー)」公演より=Photo by SHINOBU IKAZAKI

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◆ブロードウェイミュージカル「HAIR (ヘアー)」
《東京公演》2013年5月29日(水)〜6月9日(日) 東急シアターオーブ
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
 http://www.hairmusical.jp/

《筆者プロフィール》岩橋朝美 フリーエディター、フリーライター。WEBおよび出版を中心に、企画、編集、取材、執筆を行う。エンタテインメント、女性、仕事など、幅広いテーマで活動。

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