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特集(4)【ネタバレ要注意!】キーパーソンはこの人

2013年6月26日

写真:「戦国BASARA」より真田幸村役の蘭寿とむ(左)、いのり役の蘭乃はな(右)=東京都渋谷区の東急シアターオーブ、西田裕樹撮影

 さて、ここから先は物語の根幹に関わるネタバレがあるので、これから観劇予定の方でストーリー展開を楽しみたい方は読まないほうがいいかも。読み進める場合は自己責任でお願いします。

 「ストーリーにあまり期待しないほうがいい」とは書いたが、じつは2幕に入ってからあっと驚く展開がある。したがって、1幕で少し退屈だなと感じたnotゲームファンの人もじっとガマンして2幕を待つべしである。

 戦で両親を失い、幸村に助けられた少女、いのり(蘭乃はな)の正体が明かされるのだ。健気に幸村様を慕う彼女、何と、織田信長の忍びだったのだ。彼女のミッションは武田、上杉をかく乱して相打ちさせ、双方を壊滅させること。1幕では「タカラヅカ仕様に無理矢理作ったオリジナルキャラクターよね」としか見えない、ただの少女だっただけに、もうびっくり仰天である! …で、結局、いのりは幸村への愛のため自らの命を犠牲にしていくわけだが…。

 だが、この設定は、なかなか上手いなあと思った。じつはゲームやアニメでは織田信長は「魔王(第六天魔王)」とも称され、残虐非道、悪の権化のようなキャラクターである。とくにアニメでは「この国を魔王の支配下に置かないために」との名目で、武田軍、上杉軍ほか全ての戦国武将たちが力を併せて信長を倒す、というストーリーになっているくらいである。

 これほどまでに存在感の大きい信長がタカラヅカ版の配役にはなかったため、物語のスケールが小さくなってしまうのでは?と危惧していたが、いのりの登場により、その背後に信長という圧倒的な存在が感じられ、ストーリーとしてもゲームやアニメに忠実な展開が可能になったように思う。

 こうしたオリジナルキャラクターの設定は難しいものだろうが、これならゲームファンの皆さんも納得するのでは?と思った。もともと蘭乃の持つ雰囲気が、アニメやゲームのヒロインにも合うし、その可愛らしさがよけいに、背後にある信長の不気味さを感じさせる効果もあった。

 そしてフィナーレ。これがタカラヅカ伝統の、若衆の踊りである。最近は日本物のショーがめっきり減ったこともあり、逆にタカラヅカファンを驚かせたようだが、オールドファンからいわせると若衆の踊りは黒燕尾の群舞と同じくらいの「タカラヅカの定番」だ。だから、こうした機会を利用して、タカラヅカを知らない若い世代に「じつは日本物もやるタカラヅカ」を広く知ってもらうのはとても良いことだと思う。

 また、これからは、旧態依然の日本物のショーだけではなく、今回のような若い観客の感性にも響く日本物ショー上演の道も探って欲しいものだ。タカラヅカの日本物の伝統を守るためにも、それは絶対に必要なことだと今回改めて思った。

 おそらく今回の公演もコラボレーションとしては大成功で、ゲームファンの中からタカラヅカに興味を持つ人も少なからず現れることだろう。かくいう私は、現在プレステでのゲームを必死でやっている最中だ。この手のバトル系のゲームは苦手なので天下統一などは決して成し遂げられないだろうが、それでも幸村や政宗、謙信やかすがになり切って、舞台の余韻に浸りながらプレイに興じるのはなかなか楽しい。

 もちろん今回のような作品が、今後のタカラヅカの主流になることはないと思う。だが、タカラヅカならではの「二次元の三次元化力」が発揮されるジャンルとして、また、新たな観客層を取り込む有効な手段として、今後もますます重要な柱になっていくことを、改めて確信した。

◆「戦国BASARA」―真田幸村編―
《東急シアターオーブ公演》2013年6月15日(土)〜7月1日(月)
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/326/index.shtml

《筆者プロフィール》中本千晶 フリージャーナリスト。1967年山口県生まれ。東京大学法学部卒業。株式会社リクルートで海外ツアー販売サイトの立ち上げおよび運営に携わる。2000年に独立。小学校4年生のときに宝塚歌劇を初観劇し「宝塚に入りたい」と思うも、1日で挫折。社会人になって仕事に行き詰まっていたとき、宝塚と再会し、ファンサイトの運営などを熱心に行なう。宝塚の行く末をあたたかく見守り、男性を積極的に観劇に誘う「ヅカナビゲーター」。12年11月に「ヅカファン道」(東京堂出版)を出版。

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