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特集【公演評】石丸幹二ソロ・コンサート
心地よい大人の愛をプレゼント

2013年7月4日
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サンケイホールブリーゼ公演より「翼を拡げて」の一部=動画撮影・小林勝彦

 石丸幹二のソロ・コンサート「kanji ishimaru in concert 2013」を大阪・サンケーホールブリーゼで観た。6月26日にリリースしたばかりの自身2枚目のフル・アルバム「Love Songs」の発売記念コンサート。新作について石丸は「愛の花束みたいなアルバム」と紹介し、選曲のエピソードを語りながら一曲一曲を大切に披露した。これまでの人生経験を裏打ちするような、厚みのある愛が感じられたコンサートだった。(フリーライター・桝郷春美)

 会場に入るとまず、深紅のカーテンが目に飛び込んできた。ステージの壁一面に広がるその色は目に鮮やかで、気品のある空間演出だ。そこに石丸がさっそうと登場。紅の色合いがこんなに映える男性は、そういないだろう。

 前半に披露された「翼を拡げて」は、石丸の代表作の一つ、ミュージカル「GOLD 〜カミーユとロダン〜」からの楽曲で、アルバム用に新たに詞を書き加えたもの。愛する人の旅立ちを見送ろうとする男の思いが込められているこの歌は、生身の石丸が歌うことで、役の姿としてではなく、一人の男性の眼差しが伝わってきた。

 続いて、今は亡きフランスの歌手アンリ・サルヴァドールの「こもれびの庭に」を披露。5年前、活動を休止していたときに出会った思いの深い曲だと石丸は紹介し、ピアノ、フルート、ウッドベースなどの音色と溶け合い、声も楽器の一つと思わせるような歌い方だった。「こんなぼそぼそとボサノバのような歌い方もこれからしていこうかなと思っています」と石丸は語り、今後の歌手としての表現活動の広がりを感じさせた。

 今アルバム曲が中心の今回のコンサートの、もう一つの魅力がスペシャル・ゲスト、花總まりとのデュエットだ。2人は、12月に上演のミュージカル「モンテ・クリスト伯」での共演が決まっている。1990年に舞台デビューし、劇団四季の看板俳優として活躍してきた石丸と、91年に宝塚歌劇団に入団し、雪組と宙組でトップ娘役を務めた花總。「じつはキャリアが同じぐらいだと発覚したんです」と石丸は花總を紹介した。同期のような視点から2人の共演を観るのも楽しそうだ。

 ここではミュージカル・ナンバーを2人で披露し、声の表現力で観客を引き込んだ。「私が踊る時」(ミュージカル「エリザベート」より)では、2人の間からは火花が飛び散りそうな気迫が双方から感じられた。一定の距離を保って対峙する花總と石丸。天に向かって響く高音と、気配が漂うような低音が重なり合い、層の厚みが増していくような深みのあるデュエットだった。また、ベテランながら「初々しい2人が歌います」と石丸が客席を盛り上げて、ミュージカル「ロミオとジュリエット」より「エメ」を披露。ほのかに哀愁を帯びた響きだった。石丸の舞台デビュー作、ミュージカル「オペラ座の怪人」より「All I Ask of You」では、大きな愛で包み込むような石丸の歌声と、そっと寄り添う花總の声の調和が、心地よく感じられた。

 コンサートでは、石丸が丁寧に曲紹介をしていたのも印象的だ。各曲のエピソードからは、石丸が今回のアルバム作りで、どれだけの思いを込めて選曲したのかが分かる。その中の一曲「再会」もそうだ。石丸の過去の経験が含まれているこのオリジナル曲は、目の前で石丸本人が歌うと、より叙情に満ちた曲に聴こえた。心の中の引き出しをそっと開けて、また閉じるような、深い余韻が残る一曲に仕上がっている。

 「愛」をテーマにしたコンサートというと、熱いものがこみ上げてきそうだが、今回の作品を通して伝わってきたのは、安心感。どんな愛でも、一つの形として受け入れていくような心地のよさがあった。それは、石丸自身の人に対する温かい眼差しなのかもしれない。

 それは終盤の「スマイル」(映画「モダン・タイムス」より)や、「今この時」(ミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール‐籠の中の道化たち」より)などの選曲からも感じられた。石丸の温かみのある歌声で「スマイル」を聴くと、自然と笑顔がこぼれてくるよう。「今この時」では、軽快なメロディーに乗せて石丸が陽気に歌い、体ごと弾むような手拍子が会場に広がった。

 あふれんばかりの愛の花束を受け取ったような、豊かな気分を味わわせてくれた石丸幹二のソロ・コンサート。歌のプレゼントを通して、観客に前を向く力も届けてくれた。

【写真】サンケーホールブリーゼ公演より=撮影・小林勝彦

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◆「Kanji ishimaru in concert 2013」
《大阪公演》2013年6月28日(金) サンケイホールブリーゼ ※公演は終了しています
《東京公演》2013年7月6日(土) 東京国際フォーラム ホールC
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://ishimaru-kanji.com/

《筆者プロフィール》桝郷春美(ますごう・はるみ) 福井県小浜市出身。人生の大半を米国ですごした曾祖父の日記を読んだことがきっかけでライターを志す。アサヒ・コム編集部のスタッフとして舞台ページを担当し、2012年1月よりフリーランスのライターとして活動。朝日新聞デジタルでの取材・執筆のほか、人物ルポを中心に取り組む。

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