マイコンテンツ

ここから本文エリア

特集【公演評】ミュージカル・スター4人の「4Stars」
圧倒的歌唱と繊細な掛けあい、極上の共演

2013年7月5日
写真

 世界トップレベルのミュージカル・スターが日本で夢の共演を果たした。来日したのはブロードウェー、ウエストエンドなどで活躍するレア・サロンガ、ラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲス。そこに日本の若きミュージカル・スター、城田優が加わり、4人のアーティストたちがブロードウェー・ミュージカルの名曲を中心にショーを繰り広げ、極上のひとときを演出した。(フリーライター・桝郷春美)

 海外作品が来日することはあっても、世界で活躍するスターたちが日本に集結して、オリジナル・ショーを披露する機会はそう無い。日本だけでの開催となると、尚更のこと。それを実現したのが、今回の「4Stars One World of Broadway Musicals」だ。演出はダニエル・カトナー、編曲・音楽監督はジェイソン・ロバート・ブラウン。ミュージカルの本場、ブロードウェーから来た気鋭のスタッフだ。

 フィリピン出身のレア・サロンガ。イラン生まれ、カナダ育ちのラミン・カリムルー。米国出身のシエラ・ボーゲス。スペインと日本の両方にルーツを持つ城田優。4人のスターたちは、舞台上で互いに紹介し合い、仲の良い仲間が集ったようなリラックスしたムードが会場に漂う。本作は、ブロードウェー作品の名曲を中心とした2幕構成のショー。キャストがこれまで出演した代表作の名場面を再現しながら歌う、物語性のある構成になっている。ソロでたっぷりと聴かせるときは、他の3人が舞台上で共に聴いていたり、曲によっては2人ないし4人が呼応するように声を合わせたりと、誰が何をどう表現するのかを見るのも楽しい。

 本場の一流アーティストによるショーとあって、実際どの曲も素晴らしかった。ディズニー作品の歌い手としても有名なレアとシエラは、それぞれの代表作を披露。シエラは自身のブロードウェー・デビュー作「リトルマーメイド」の「PART OF YOUR WORLD」をソロで歌った。壁一面にボックスが高く積み上げられたステージで、その中腹に座ってシエラが歌い始めると、そこがまるで海中であるかのように見えてくる。海面を憧憬の眼差しで見つめ、手を伸ばして何かを求めるように歌うシエラ。可憐な容姿で、艶やかな美声を響かせ、観客を夢見心地な気分に浸らせてくれた。

 世界的に親しまれるディズニー映画「アラジン」のテーマソング「A WHOLE NEW WORLD」。女声パートを歌う「あの声」がレアだ。洗練された歌声を響かせるレア。ここでは城田が相手役として参加し、レアと声を重ね合わせた。続いてシエラとラミンが現れ、2組のカップルが向かい合って会話をするように歌い上げた。

 1幕のクライマックス。ラミンと城田は、クリスティーヌ役のシエラを相手に「ファントム」「オペラ座の怪人」の世界を創り出した。城田にとっては初めての挑戦。もう一つの「オペラ座の怪人」と言われるモーリー・イエストン作詞作曲の「ファントム」より「YOU ARE MUSIC」では、城田とシエラの掛け合いが優しく響く。「ドレミファソ…」と交互に口ずさむ歌い出し。目の前の歌姫をなぞるように歌う城田の繊細さが印象的だ。「オペラ座の怪人」の「ALL I ASK OF YOU」では、情熱と儚さが同居したファントムで、2011年に城田が熱演したあのロミオの姿と重なって見えた。

 一方、最年少の26歳でウエストエンドでの「オペラ座の怪人」タイトルロールに抜擢され、「オペラ座の怪人」25周年記念コンサートでも主役を演じたラミン。ステージでも、百戦錬磨の貫禄が漂う「怪人」だった。当時ヒロインのクリスティーヌ役を演じたのがシエラ。2人は劇場全体を支配するような、圧倒的な歌唱力で、観客を引きつけて離さない。

 「THE MUSIC OF THE NIGHT」ではラミンが魔術師のような身のこなしで、クリスティーヌを手にした「瞬間」を演出。そのシーンはまるで、幻想を見ているかのようだった。オペラ座の地下深く。音楽の力で彼女を支配しようとする怪人と、恐怖で張りつめた表情のクリスティーヌ。誘惑するような怪人の歌声が音の波に乗って運ばれると、クリスティーヌの表情が次第に恍惚としたものに変わっていった。そして2人が結ばれる瞬間、理性やあらゆる感情を飛び越えたその先の色気が感じられ、ゾクゾクした。

 2幕では、「レ・ミゼラブル」や「ミス・サイゴン」の名曲などを披露。レアは18歳のときに「ミス・サイゴン」初演(1989年)でヒロインのキム役に抜擢され、数々の賞を受賞している。その彼女が歌う「I'D GIVE MY LIFE FOR YOU」は圧巻の一言。力強い歌声の中に、子どものために命を捧げるキムの覚悟が痛いほど感じられ、生きていく、その厳しさと尊さについて、まざまざと見せつけられた気がした。

 また2幕では、ミュージカル・ナンバーとは違う見どころも。4人がそれぞれの得意分野を生かして、5つの言語でソロを歌った。城田がイル・ディーヴォの「ISABEL」をスペイン語で祈るように歌い、ラミンがギター片手にカントリーミュージック調の「REMINDER」を日本語と英語で開放感たっぷりに、またシエラはイタリア・オペラ「QUANDO ME'N VO」で超絶なソプラノ・ボイスを響かせ、レアはタガログ語で「IKAW」をしっとりと歌い上げた。この場面は、この4人だから作り出せた、今回のショーの醍醐味だろう。

 冒頭で感じた和やかな雰囲気は、ショーの最後まで続いた。錚々たる顔ぶれの中で、日本代表として参加した城田には、重いプレッシャーがのしかかっていたかもしれない。しかし、筆者が観た大阪公演では、そんな気負いが微塵も感じられなかった。4人は互いの才能を尊重しながら、声を合わせていくことを、心から楽しんでいるように見えた。

 日本だけで行われた、唯一無二のプレミアム・ショー。また同じメンバーで観たい、と思うのは、贅沢な望みだと知りつつも、そう思わずにはいられない珠玉のショーだった。

【写真】「4Stars」公演より=写真提供:梅田芸術劇場

【フォトギャラリーはこちら】

【ラミン・カリムルーさんインタビュー記事はこちら】

◆「4Stars One World of Broadway Musicals」
《東京公演》2013年6月15日(土)〜23日(日) 青山劇場
《大阪公演》2013年6月27日(木)〜30日(日) 梅田芸術劇場メインホール
※公演は終了しています

《筆者プロフィール》桝郷春美(ますごう・はるみ) 福井県小浜市出身。人生の大半を米国ですごした曾祖父の日記を読んだことがきっかけでライターを志す。アサヒ・コム編集部のスタッフとして舞台ページを担当し、2012年1月よりフリーランスのライターとして活動。朝日新聞デジタルでの取材・執筆のほか、人物ルポを中心に取り組む。

バックナンバー

宝塚歌劇一覧へ>> 舞台一般一覧へ>> 動画掲載記事一覧へ>> 過去記事一覧へ>>

過去記事一覧へ>>

ページトップへ戻る

Astandについて個人情報著作権利用規約特定商取引会社案内お問い合わせ