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特集【公演評】新歌舞伎座「七月特別企画公演」
大和悠河、前川清と左とん平と珍道中

2013年7月18日

動画撮影・岸隆子

 「七月特別企画公演」が、7月8日、大阪新歌舞伎座で初日を迎えた。今年でデビュー45周年を迎える前川清の座長公演で、左とん平とともに、大和悠河が出演し、マドンナ的存在で作品に大きな華を咲かせた。これまでと違った色の舞台を全身で楽しむ大和と、元タカラジェンヌの美しさにお客さんが大喜びする様子に、新鮮さいっぱいの公演となった。(フリーライター・さかせがわ猫丸)

 和モダンな新歌舞伎座は美しく快適で、ロビーでは観劇弁当、お土産などが豊富に販売され、「観劇を楽しむ特別な1日」の高揚感にあふれている。客席に花道があることと、赤ちょうちんの飾りや、舞台との距離の近さも印象的だ。空気はほっこりのんびりしていて、毎月定期的に観劇する、「劇場についた」お客さんも少なくない。そんな宝塚大劇場とは違った雰囲気の舞台で、さらに今回は完全なコメディー。大和は先ごろのインタビューで語ったように、未知の世界でワクワクする様子と、前川清、左とん平という大ベテランに刺激を受けながら、今、自分が持つ魅力を最大限に発揮しようとする姿がまぶしく光る舞台となっていた。

 第1部は「東海道凸凹(でこぼこ)珍道中」、痛快時代劇コメディーだ。江戸、とある神社の境内。女芸人を揃えた桃千代一座の面々は、人気が今ひとつでお金に困り、上方へ戻ることを決意していた。一座の看板役者、お蝶(大和)も旅支度を始めるが、そこへ紙屑屋見習いの清太郎(前川)と親方の留吉(左)が通りかかる。留吉は記憶喪失の清太郎を引き取り弟子にしたと言うが、凸凹コンビのおかしなやりとりに、みんなはあきれるばかり。そんな中、清太郎はお蝶の美しさに一目ぼれするが、一座は東海道へと旅立ってしまった。再び紙屑拾いを始めた2人は、偶然、やくざの一味が商人を殺害する現場を目撃してしまったために、追われる身となり、東海道へと逃げる旅が始まったのだが…。

 お蝶は武家の娘だが、わけあって旅役者をしている。殺された父の仇である、腕に牡丹のあざがある侍を探すため、一座と行動をともにしていたのだ。一座は陽気な座長を含む女形が2人と、あとは全員女性。そこへ、若衆姿に扮したお蝶がさっそうと登場するのだが、パッと花が咲いたような麗しさは、さすが元男役トップスター。長身で抜群のスタイルとオーラに、宝塚を知らない人はドキッとさせられたのではないだろうか。すっかり女らしく「変身」した大和だが、今でも男性の衣装を着ると自動的にスイッチが入ると語っていたように、その凛々しさは健在だ。

 ひょうひょうとした持ち味が生きるコメディーセンス抜群の前川と、大御所・左のかけあいは爆笑の連続。ベテラン2人の絶妙な間合いに、大和が思わず吹き出しそうになる場面も。止まらないボケと弾丸ツッコミの2人、そしてマドンナ役の大和、そのコントラストがまたおかしくてたまらない。町娘の姿に戻ってからは、父の仇を討つため凛とした強さを持ちつつ、可愛らしさが全開となる。和物の所作も文句なく、ほのかに芽生えた清太郎との恋にも思わず応援したくなった。

 悪者に追われる清太郎と留吉をかばいながら、東海道を西へと逃げる桃千代一座。お蝶はついに父の仇を見つけ、華麗な立ち回りを披露するあたりはさすがの動きだ。やがて、謎だった清太郎の素性が判明すると、どんでん返しの展開へ。悪者も囚われ、清太郎とお蝶もめでたく結ばれ、物語は大団円を迎える。大いに笑って、ほろりとさせられて、まさに痛快時代劇コメディー。客席に広がるお客さんの満開の笑顔が、その満足度を物語っているようだ。

 第2部は、トークも盛りだくさんの歌謡ショー「前川清オンステージ ザッツ・エンターテイメント!!」。舞台には生バンドも並び、前川清が数々のヒットソングを歌い尽くす。時折挟まれるトークコーナーに左とともに参加した大和は、大きく胸元が開いたセクシーなキャミソールに黒のロングジャケットスーツ。元男役だったことに関心しきりの前川は、「そういえば芝居で、恋の芽生えの瞬間に見つめ合うのが女性の感覚と違った」と語り、爆笑を誘った。その後は3人で、サザンオールスターズの「真夏の果実」を熱唱。脚を大きく開いて立つ大和はとにかく男前。

 さらに左がマスターをつとめるバーに、客として前川と大和がやってくるというショートコント(?)も。花柄のボディコンシャスなミニワンピースに同じ柄のハイヒールで、一転、セクシーな大人の女性となって、2人をドギマギさせていた。大和メインとなる「シカゴ」のシーンでは、女性ダンサーを率いて、銀ラメのミニスカートドレスでダイナミックにダンスを披露。大和悠河の実力を、新歌舞伎座のお客様にたっぷりと魅せつけた。

 お弁当を買って心躍らせながら1日を楽しむイメージの新歌舞伎座。芝居、ショーともに、そんな客層にふさわしく、「まったり」「ほっこり」「ゆっくり」なやさしさにあふれている。その中へ飛び込んだ大和の存在は、舞台に大輪の花を咲かせ、刺激的なスパイスとなっていたようだった。

【写真】新歌舞伎座「七月特別企画公演」、第1部「東海道凸凹珍道中」より=写真提供・新歌舞伎座

【フォトギャラリーはこちら】

【大和悠河インタビュー記事はこちら】

◆新歌舞伎座「七月特別企画公演」
《大阪公演》2013年7月8日(月)〜25日(木) 新歌舞伎座
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://www.shinkabukiza.co.jp/perf_info/20130708.html

《筆者プロフィール》さかせがわ猫丸 大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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