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特集(2)形から入ったらスカスカになる

2013年8月2日

写真:平方元基撮影・岩村美佳

――感受性が強い子ども、青春期だったんでしょうか。感じやすいというか。私が平方さんを初めて拝見したのが、平方さんのミュージカルデビュー作である「ロミオ&ジュリエット」の初演だったのですが、その時に凄く繊細なティボルトだなと思ったんですよ。それまでの荒くれ者のイメージとは随分違うなと。

 僕もティボルト役がまさかくるとは思っていませんでした。初めてのミュージカルでそんな大役が頂けるとは。周囲のみんなも驚いたと思います。マネージャーさんから電話がきた時に「受かったよ。何の役だと思う?」と聞かれて「わかんない、わかんない」と言ったら、「ティボルト」と言われて「ええ!?」って。「無理じゃない?」って。だから、最初は受かったのはうれしいけど……。頭の中にテロップで出ました、「どうしよう」って(笑)。

――オーディションではとくに何の役という指定はなかったんですね。

 全員がティボルトの歌を歌って、小池(修一郎)先生が役の振り分けをされました。

――ご自身ではまさかティボルト役がくるとは思っていなかったから、青天のへきれきだったわけですね。

 その通りです! まさに青天のへきれき。

――そのティボルトをどのように役作りしていこうと思いましたか?

 何をしていいかわからないし、台本もまだなかったので、しばらくぼーっとしていたんですよ。3日後にマネージャーさんから「何してますか?」と電話がかかってきて。「特に何もしていないです」と答えたんです。なんとなく「役について考えていました」って。そうしたら「とりあえず、何かするの!」と言われて(笑)。とりあえず何かするんだ……と思って、「ジムに行きます」と言って、ジムに入会手続きに行きました。

――入会からですか(笑)。

 そう(笑)。ミュージカルだから体を鍛えないとと思って。そうしたら、筋肉がつきすぎてしまって。その後に「エリザベート」でルドルフをやらせていただいたんですけど、体がパンパンで。

――たしかに、ひとりガッチリしたルドルフでした(笑)。

 ほかのふたりが線の細いルドルフなのに、僕だけ「お前、国を守れちゃうよ」みたいな(笑)。みんな、たくさん肉(襦袢)を入れているのに「お前は必要ない」って、全部取られたんですよ。でも、ジムに行って体を鍛え始めたのが、ミュージカルが楽しくなってきた始まりでしたね。遡れば。

――実際にティボルトを演じてみていかがでした?

 きつかったです。きつかったけれど、ティボルトはソロのナンバーも多いので、歌っている時は気持ちよかったですね。緊張はしたけど、あのライトがきた瞬間の気持ちよさはほかでは味わえないなと思いました。

――それまでストレートプレイは経験がおありで、でもミュージカルはやはり全然違いますか?

 歌を歌うことは趣味程度には好きだったので、仕事として歌をみなさんに披露しなきゃいけないというプレッシャーはありましたけど、何の技術もないので、とにかく今できることを全部やろうと思って。喉が枯れてもやるしかなかったし、それでもやるのが舞台だと思わせてくれたのも初演のロミジュリでした。いろんな覚悟を教えてもらった気がします。

――先ほどの制作発表会見で、演出家の小池先生が初演の平方さんを「ちょっと頼りないティボルト」とおっしゃっていましたが。

 あれは、やさしいほうなんです。あの1000万倍くらい稽古場では突き刺さるようなことを言われます。

――例えば、どんな。

 言えないです、そんなの(笑)。でも、鈍感なんですよ、僕。マネージャーさんにもそうなんですけれど、相手が凄く怒っていることがわからないんです。だから稽古場では、(石川)禅さんとか涼風(真世)さんとか、周りの先輩方が凄く心配してくれました。「大丈夫? あんなに言われて」って。本当に誰よりも僕が言われていたんですよ。でも、僕は意外とケロッとしていました。ただ、時間が押しているのに、僕のためにみなさんをお待たせしているのは申し訳なかったですね。でも、うれしかったです。そこまで、小池先生が自分を見てくれているんだと。

――先ほども言いましたけれど、平方さんの繊細なティボルトはほかにはなく印象的でしたよ。

 形から入ったらスカスカになるなと思って。(Wキャストが)上原(理生)君になると聞いて「レ・ミゼラブル」を観にいったんです。その時の上原くんは僕が想像していたティボルトそのもので、愕然として、このままでは絶対太刀打ち出来ないと思ったんです。じゃあ、どうするかと考えて、強い人でも弱いところがあるし、弱い人でも強く見せようとする。そういう弱いところや、どういうところがネックで心がくすぶってしまったのかを考えたら、別にティボルトが悩んでいてもいいんじゃないかなと思って。小池先生もあのようにおっしゃっていましたけど、僕が考えていることに対しては凄く助け舟を出していただいたと思います。

 宝塚版をご覧になっている方も多いので、みなさんの中でしっかりとティボルトのイメージを持っている方もいらっしゃるので。それを自分がやったことで、こういうティボルトもいるんだなと思ってくれたことはよかったし、ありがたいことだなと思いました。幕が開けるまでは怖かったです。それはどの役を演じていても怖いですね。幕が開くまでは怖いです。

――なるほど。そして、次のミュージカル出演作も小池先生演出の「エリザベート」。帝劇で大作というプレッシャーはありましたか?

 「エリザベート」は楽しくてしょうがなかったです。ロミジュリも幕が開いてからは楽しくなってきました。

――そのきっかけは?

 自信がつく前に、変な自信がついてしまったんでしょうね。言葉では表せないものが体を支配するから、よく舞台はやめられないという方、いらっしゃるじゃないですか。それだと思うんですよね。なんて言ったらいいかわからないんですけど。稽古で役を練り続けながらくすぶっている部分があるじゃないですか。舞台は、それを爆発できる場所というか。

 きゅーっと稽古場で固めてきたものを爆発させて、後はその役で表現したものをお客さんが解釈するものだと思うんですね。自分はこう思いながら作ったけれど、お客さんが別の解釈をしたら、それはそれで正解だと思うので、だからお客さんに観て頂いて色々感じてもらう事は本当にありがたいことなんです。「お客さんにこう思ってもらわなければ嫌だ」みたいなこだわりがなくなってから、自分が役と向き合って演出家の方と一緒に出した答えに沿ったものを丁寧にやればいいんだと、凄く自分の自信になりました。

――帝劇は独特の緊張感があると、他の役者さんから聞きますが。

 何か降りてくるというのは、余裕が出てきてからだと思いますよ! まだまだ必死すぎて降りて来ていても分からないと思います。

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