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特集【公演評】ミュージカル「アメリカン・イディオット」
バカなアメリカ人にはなりたくない(公演動画掲載)

2013年8月13日
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「アメリカン・イディオット」日本公演より=動画撮影・岩村美佳

 世界的な人気を誇るロックバンド、グリーン・デイのグラミー賞を受賞した同名アルバムをミュージカル化し、ブロードウェイをはじめ全米各地で大ヒット。そして、トニー賞受賞にも輝いた話題のロック・ミュージカル「アメリカン・イディオット」が東京国際フォーラム・ホールCにて上演中だ。(フリーライター・岩橋朝美)

 アメリカの郊外で無気力な日々を過ごす若者ジョニー。彼は友人のタニーとウィルを誘い都会へ出ようとするが、ウィルは恋人ヘザーの妊娠が発覚し町に残る。都会へ出たジョニーは魅力的な美女とドラッグの虜となり、一方都会に馴染めないタニーは徴兵募集のテレビCMに魅せられ、軍に入隊してしまう。

 「イディオット」とは英語で「バカ」などの意味を持つ言葉で、全編を通して充満するのは若者の閉塞感と孤独感、そして強い反戦メッセージだ。「バカなアメリカ人にはなりたくない」と歌う疾走感に満ちたロックンロール「アメリカン・イディオット」やハードな「セイント・ジミー」では若者特有の焦燥や無軌道なエネルギーに、美しくメロウな旋律の「ブールヴァード・オブ・ブロークン・ドリームス」「ウェイク・ミー・アップ・ホウェン・セプテンバー・エンズ」では、ふと立ち止まった時に感じる孤独や挫折の色濃さに胸を衝かれる。また、「武器を捨てよう」と歌われる「21ガンズ」にはイラク戦争でアイデンティティの揺らいだアメリカの心の叫びを感じるとともに、同じ道を歩み始めているかもしれない日本の行く末をも考えさせられた。

 ほぼ歌のみで展開しながら主人公らの心情がダイレクトに伝わるのは、原作のアルバムが持つ明確な物語とメッセージ性とともに、それらを的確に汲み「台詞を極力排し、シンプルな物語にすることで、フィジカルに感じられる舞台にしたかった」という演出家マイケル・メイヤーの手によるところが大きい。また、ロック・ミュージカルには珍しくダンスを多く取り入れたことで、一層若者たちの憤りや思いが可視化された。テレビのモニターが所狭しと並べられ、メディアに毒される現代アメリカを皮肉ったセットやヴィヴィッドな照明もインパクト十分だ。

 メイヤーは、自身も原作アルバムの大ファンで「あるインタビューで、グリーン・デイのアルバム『アメリカン・イディオット』はミュージカル化されるべきだと思う」と語ったところ、「春のめざめ」で組んだプロデューサーのトム・ハルスから「演出する気はあるか?」と声がかかったそう。「この作品は、まだ目覚めたばかりで周りのすべてがくだらないものに見えている若者たちが、外の世界を知り心の葛藤を経て成長する物語。人生は失敗もするけれども、『自分が何者かを知ること』がとても大事だということを伝えたい」と初日の幕があく直前にお会いした時、メイヤーは話していた。

 ノンストップで駆け抜ける約1時間半のステージは、観ている間はあっという間に感じられる。だが、「この作品を観れば、きっと何かしらインスピレーションを受けとってもらえると思う」というメイヤーの言葉通り、観終わった後で、示唆に富んださまざまなシーンを幾度となく反芻し考えさせられる作品だった。

【写真】「アメリカン・イディオット」公演より=撮影・岩村美佳

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◆ブロードウェイミュージカル「アメリカン・イディオット」
《東京公演》2013年8月7日(水)〜8月18日(日) 東京国際フォーラム ホールC
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://www.aidiot.jp

《筆者プロフィール》岩橋朝美 フリーエディター、フリーライター。WEBおよび出版を中心に、企画、編集、取材、執筆を行う。エンタテインメント、女性、仕事など、幅広いテーマで活動。

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