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特集(3)見応えが増した最後のフィナーレ

2013年8月21日

 原作である「男たちの宝塚」(辻則彦著)は、宝塚歌劇「男子部」の結成から解散までの過程を、綿密な取材でその実態を明らかにした一冊だ。

 個人的な話だが、辻氏の著作のことを知ったのは、初めてのタカラヅカ関連の本(「宝塚読本」2006年)の執筆のためにいろいろ調べていたときのことだった。歴史の中に埋もれていく存在であった「男子部」の存在を掘り起こし、光を当てるというのは実に意義ある仕事だと思った。

 以来、辻さんの著作のおかげもあって、「宝塚歌劇に男子部が存在した」ことは、タカラヅカのトリビアネタ的に語られることが増えた。だが、舞台版「宝塚BOYS」は今や、「知られざる歴史的事実を舞台化した」ことで評価されているわけではないと私は思う。

 そこから伝わって来るものには、誰もが共感できる普遍性がある。自分ひとりではどうにもならない苦境、あるいは、努力しても努力しても叶わなかった夢。誰にだってそんな経験がひとつぐらいはあるだろう。そういう状況にどう向き合うべきかを教えてくれる…というほど安直な話ではない。だが、人生の無駄だったのではないかと思える時間や、封印してしまいたいような過去の経験に、一筋の光を当ててくれるような、そんな効用がある。

 この作品、最後にはちゃんとフィナーレもついていて、7人の男子が黒燕尾に身を包んで踊る。現実には果たせなかった「夢」が、叶ったといったところだ。重いテーマから一瞬にして解放されて楽しめるのは、まさにタカラヅカのフィナーレの効果と同じである。

 この場面の出来が初演ではちょっと不満だったのだが、今回はミュージカルの実績もあるメンバーが多かったこともあり、ぐっと見応えが増していた。曲として使われていた「すみれのボレロ」の短調アレンジも洒落ていて、これは本家本元でも使って踊って欲しいと思ってしまったほどだった。

 この6年で私自身もファンとしてだけでなく、ひとりの書き手としてもタカラヅカをさまざまな角度から見つめ続けて来た。そして今、再び観る「宝塚BOYS」からは、初演のころよりもはるかに多くのものを受け取ることができた。100周年を目前とした今のタイミングでこの作品に再び出会うことができて、ほんとうに良かったと思った。

◆「宝塚BOYS」
《東京公演》2013年7月23日(火)〜8月11日(日) シアタークリエ
《名古屋公演》2013年8月13日(火) 愛知県芸術劇場 大ホール
※公演は終了しています。
《兵庫公演》2013年8月24日(土)〜25日(日) 兵庫県立芸術文化センター  阪急中ホール
《横浜公演》2013年9月3日(火)〜5日(木) 県立青少年センター(貸切公演)
《新潟公演》2013年9月11日(水) 新潟市民芸術文化会館 りゅーとぴあ・劇場
《千葉公演》2013年9月15日(日) 四街道市文化センター(貸切公演)
《千葉公演》2013年9月17日(火)〜20日(金) 千葉市民会館(貸切公演)
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://www.takarazuka-boys.jp/info.html

《筆者プロフィール》中本千晶 フリージャーナリスト。1967年山口県生まれ。東京大学法学部卒業。株式会社リクルートで海外ツアー販売サイトの立ち上げおよび運営に携わる。2000年に独立。小学校4年生のときに宝塚歌劇を初観劇し「宝塚に入りたい」と思うも、1日で挫折。社会人になって仕事に行き詰まっていたとき、宝塚と再会し、ファンサイトの運営などを熱心に行なう。宝塚の行く末をあたたかく見守り、男性を積極的に観劇に誘う「ヅカナビゲーター」。12年11月に「ヅカファン道」(東京堂出版)を出版。

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