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特集【トピックス】「ジャンヌ」トークイベント&稽古場レポート
笹本「ワンシーンごとに帰りたい…」

2013年8月26日
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「『ジャンヌ』〜ノーベル賞作家が暴く 聖女ジャンヌ・ダルクの真実〜」トークイベントより=撮影・宮川舞子

 2013年9月に世田谷パブリックシアターで上演される「『ジャンヌ』〜ノーベル賞作家が暴く 聖女ジャンヌ・ダルクの真実〜」のプレトークイベントが行われた。同公演を観劇予定の観客を対象に、出演の笹本玲奈、今井朋彦、伊礼彼方、演出の鵜山仁が稽古場での様子や作品について話した。その後行われた稽古場の様子と併せて紹介する。(フリーライター・岩村美佳)

 主役のジャンヌを演じる笹本が、「ワンシーンごとに帰りたい…と思うぐらいに疲れます(笑)。裁判場面では、強面のおじさま達に囲まれることが、意外にストレスなんだなと…。『私は今、囚人として兵士に囲まれている。もし自分が女の格好をすれば、兵士達は女として私を見ることになる』というセリフを心の底から言っています! その前の場面もつらくて、『伊礼くん、友達だったじゃん…』と切なさを背負いながら稽古しています」と話すと、会場は爆笑。オルレアンの私生児デュノア役を演じる伊礼も、「『伊礼くん』ではなく、『デュノア』です」と笑った。

 イギリスの伯爵ウォリック役を演じる今井は、「熱くなって言っているところを、鵜山さんに『低温動物でやってくれ』と言われたので(笑)、どこまで低温にしようか考えているところです。僕の出番は開演から1時間後ぐらいの4場からなんですけれど、かなり難解な言葉が飛び交うのですが、僕らも頑張ってしゃべるので、付いてきて頂きたいです。コーション役を演じる村井國夫さんと、ジャンヌをどうするかについて密談する場面です」と話した。「なぜジャンヌが裁判にかけられるのか」について口火を切る場面である4場を、鵜山は、「セリフのテンポとダイナミクスを楽しんでもらいたい」と付け加えた。

 伊礼は、「赤ちゃんで言えば、今やっと歩き方がわかってきたような感じです。残りの稽古期間で、鵜山さんの言うことを頭で理解するだけでなく感じて表現していきたい。ジャンヌに近しい存在ながらも複雑で、まだ捉えきれていないんです。例えば、彼女を守ろうと思っていることが、逆に傷つけてしまう場面などもあります」と今の状況について話した。

 3人についての印象を尋ねられた鵜山は、「笹本さんは突撃型で、エネルギーの出し惜しみをしない感じで、こういう人は今までにいなかった。今井君は、言葉や音に敏感な人。今井君なりのやり方で僕が要求していることを表現してくれます。伊礼君は、あけっぴろげで何でも素直に言ってくれるし、考え方がはっきりしています」と分析。これに対して伊礼は、なぜ素直に色々聞くのかについて話し始めた。「僕はキリスト教という文化に触れたことがないので、『主キリストの受難』がカトリックの人々にどう響くのか、その感じ方がわからず、このセリフに対してどう反応すればいいのかがわからないということがたくさんあるんです。そこを鵜山さんにはっきりと聞いて、準備して、初日までに作り上げていきたいです」と明かした。

 この「受難」に対して鵜山は、「一番興味があるのは、『愛情が自分の為なのか、自分以外の何かに対してなのか』というところ。『人間は死んで初めて人の役に立つ』とよく言うけれど、そこを目指しているという面もあります。『受難』ということで言えば、そういうことで悩む、苦しむということではないでしょうか。『自分の為にだけ生きるのは意味がない、自分は生きているうちに何を表現すればいいのか』といったことに対して興味を持つようになると、それは宗教の領域と紙一重だし、アートの意味もその辺りにあるだろうと思います。ごく身近な問題で何を後世に伝えていこうかという感覚で、自然に生きるようになると『受難』は身近な問題で、日常のなかにそういう瞬間はたくさんあります」と説明した。

 「転覆していくジャンヌについてどう思うか」という質問に対して、4人はそれぞれの立場から考え、語った。笹本は「人間は強さのなかに必ず弱さを持っていて、そういうところにも今回ジャンヌは描かれているので、共感します」、今井は「4場ではウォリックはまだジャンヌを見ていないと思うけれど、どういうイメージを持っていたのか興味があります。エピローグで直接顔を合わせるシーンがあって、そこから何かもらえるものがあるので、4場に生かしていければいいなと思っています」と答えた。

 伊礼と鵜山は「難しい質問だ…」と考え込んだ。そして伊礼は、「デュノアは、ジャンヌを導いてあげたいのに導いてあげられない、でも彼女は過去の自分や自分が経験したことを思い出させてくれているという事実が、この関係性には複雑に含まれているなと思い、そこを整理している段階です。そういった関係性が垣間見えたら面白いんじゃないかと思っています」とまとめた。鵜山は、「これは、周りの人間達がジャンヌの力や名声を利用するだけ利用して捨ててしまったという話でもあるわけですが、そもそもジャンヌに限らず人間関係のなかで相対するときに、使い捨てという習慣はいくらもあると思うんです。そういう人間関係の残酷な面と、おそらくその目に見えて役に立つこと以外の何かが伝わったということで、皆が変わっていく。でも死ぬまでに変わりきれるとは到底思えないから、おそらくそれが何百年、何千年という時間を通じてジャンヌが生き残っている理由だと思うんです。転覆したことで何が残るのかと同時に、なぜこんなに簡単に人を捨ててしまえるのかについても大事にして、表現していければいいと思います」と語った。

 その後訪れた稽古場では、エピローグの場面を稽古していた。1920年、ジャンヌが「聖女ジャンヌ」となった年に、死んだあとのジャンヌ達が再会する死後の世界を描いている。ここで鵜山が繰り返し「動機」という言葉を発していた。ひとつのセリフ、ひとつの動きに至る動機を明確にすることを大前提に芝居を組み立てている。ひとつひとつに動機がなければ、その動きや言葉にならないはずというのは当然なのだが、そこに鵜山のこだわりが見えた。こうして出来上がる「ジャンヌ」の世界がどんな作品になるのか、ますます期待が高まった。

【写真】「『ジャンヌ』〜ノーベル賞作家が暴く 聖女ジャンヌ・ダルクの真実〜」トークイベントより=撮影・宮川舞子

【稽古場フォトギャラリーはこちら】

【「ジャンヌ」制作発表の記事はこちら】

◆「『ジャンヌ』 〜ノーベル賞作家が暴く 聖女ジャンヌ・ダルクの真実〜」
《東京公演》2013年9月5日(木)〜9月24日(火) 世田谷パブリックシアター
《兵庫公演》2013年9月28日(土)〜29日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
《豊橋公演》2013年10月5日(土) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
《札幌公演》2013年10月9日(水) 札幌市教育文化会館 大ホール
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2013/09/20139.html

《筆者プロフィール》岩村美佳 フリーフォトグラファー、フリーライター。舞台関係、ファッションなどを中心に撮影してきた経験をいかし、ライターとしても活動している。「目に浮かぶ言葉」を伝えていきたい。

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