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特集【公演評】ミュージカル「ドラキュラ」再演
和央ようか、そぎ落とされた美しさ

2013年8月30日
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 ミュージカル「ドラキュラ」が東京国際フォーラム・ホールCで上演中だ。ブラム・ストーカーの同名小説が原作。フランク・ワイルドホーンが作曲、ドン・ブラック、クリストファー・ハンプトンが脚本・作詞を手掛けた。日本では2011年に初演され、今回は2年ぶりの再演となる。(フリーランスライター・岩村美佳)

 19世紀末のヨーロッパ。ロンドンの屋敷を購入したドラキュラ伯爵(和央ようか)に会うため、イギリス人弁護士ジョナサン・ハーカー(辛源)はトランシルヴァニア地方の城を訪れる。ジョナサンは、自分の婚約者ミーナ・マレー(安倍なつみ)の写真に目をとめた伯爵が、不可思議な関心を寄せていることに気づく。ドラキュラ伯爵はジョナサンの首から鮮血を吸い、若々しい姿に生まれ変わってイギリスへと旅立った。ミーナの親友ルーシー・ウェステンラ(菊地美香)は、3人の男性―ジャック・スアード医師(渡辺大輔)、アメリカ出身のクインシー・モリス(松原剛志)、幼なじみの貴族アーサー・ホルムウッド(矢崎広)から求婚され、アーサーを選ぶ。しかし、ミーナを呼ぶドラキュラ伯爵の声に共鳴したルーシーは、伯爵に咬まれてしまう。ジャックの恩師ヴァン・ヘルシング教授(鈴木綜馬)は、ルーシーがヴァンパイアに襲われたと悟り、一同と共にヴァンパイア化したルーシーを葬った。一方ミーナは、どうしようもなくドラキュラ伯爵に心惹かれる思いを抑えられずにいた。伯爵とミーナに生まれた運命の恋、ヴァンパイアを退治せんとするヴァン・ヘルシングたちの死闘が交錯する…。

 音楽や脚本をはじめ、ゴシック調でスタイリッシュな美術と衣装など、初演と大きな変化はないが、一番の違いと言えば、和央だろう。初演は冒頭のドラキュラ城での不可思議でデコラティブな姿が印象的だったが、今回は全く違う。ブロンドのロングヘアとダークな衣装に身を包んだ姿は美しく魅力的で、一気にドラキュラの世界に引き込まれる。インタビューで和央が「前回作り込んだものを取って、本来の自分に近づけたい」と話していたが、まさにそれが具現化されていて、そぎ落とされた美しさだ。

 プログラムには、訳詞・演出を手掛ける吉川徹がこの作品で「愛」を伝えたいと書いていて、キャストたちもそのことに触れている。ドラキュラに愛する人を奪われる男たちを見ていると、ドラキュラ伯爵は敵ということになるが、この作品はドラキュラ伯爵とミーナの愛の物語を描いている。これはドラキュラ伯爵に魅力があって、感情移入できないと成り立たないかもしれない。和央なればこそのドラキュラ伯爵の魅力が、愛の物語をいっそう際立たせている。

 ワイルドホーンのメロディアスな楽曲が、ドラキュラの耽美で優美な世界感の土台になっている。さらに和央、安倍、菊地、辛源らの歌声が柔らかく、音楽と歌声の重なりが心地よい。今回のキャストならではの特徴ではないだろうか。一方でヴァン・ヘルシングたちが戦いに向う場面などのドラマティックな楽曲も耳に残る。心の奥に触れるような繊細な優しい楽曲と、リズミカルで心を奮い立たせるようなドラマティックな楽曲のどちらもがワイルドホーンの音楽の魅力だ。

 初日のカーテンコールではワイルドホーンが登場して「音楽を通して皆さんに心を伝えられた。和央とは宝塚の「Never Say Goodbye」で初めて一緒に仕事をしたが、それから長い間に素晴らしい成長を遂げ、女性でこのドラキュラ役を演じたことが素晴らしい」と話した。日本版ならではの美しく哀しいドラキュラの愛の世界を堪能出来る作品に仕上がっている。

【フォトギャラリーはこちら】

【写真】「ドラキュラ」公演より=(C)清水 隆行

【和央ようか・安倍なつみインタビュー動画はこちら】

◆ミュージカル「ドラキュラ」 オーストリア・グラーツ版
2013年8月23日(金)〜9月8日(日) 東京国際フォーラム・ホールC
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://dracula-the-musical.com/

《筆者プロフィール》岩村美佳 フリーランスのフォトグラファー、ライター。舞台関係、ファッションなどを中心に撮影してきた経験をいかし、ライターとしても活動している。「目に浮かぶ言葉」を伝えていきたい。

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