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特集【インタビュー】バレエの堀内元と吉田都、初の共演
NYCBと英国ロイヤル、毎日がオリンピックでした

2013年9月10日

動画撮影・岸隆子

 アメリカとイギリス、別々の国で活躍してきた世界的な日本人バレエダンサーのトップランナー、堀内元&吉田都の二人が、初めて兵庫県立芸術文化センターの「堀内元バレエUSA IV」で共演した。公演を前にお二人に話を聞いた。(インタビュー:フリージャーナリスト・菘あつこ、朝日新聞社デジタル本部・橋本正人、文:菘あつこ)

 ※このインタビューは8月30日〜31日の公演を前に収録したものです。

 1980年のローザンヌ国際バレエコンクールで金賞を受賞し、アメリカンバレエスクールに留学。2年後にジョージ・バランシンに認められて日本人として初めてニューヨーク・シティ・バレエ団に入団、東洋人として初めてのプリンシパルダンサーに登り詰めて、現在セントルイス・バレエの芸術監督を務める堀内元。そして、堀内の3年後、1983年のローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞を受賞し、英国ロイヤルバレエ学校に留学、ピーター・ライトに認められサドラーズウェルズロイヤルバレエ団(現バーミンガムロイヤルバレエ団)に入団、プリンシパルに昇格し、1995年に英国ロイヤルバレエ団に移籍して数々の主役を踊って来た吉田都。お二人の対談には、短い時間にも関わらずその経験に基づいた深いものが溢れていた。



──お二人が共演されるのは初めてだそうですね。

堀内:はい。複数の演目を上演するフェスティバルで一緒になったことや、一昨年には僕が芸術監督を務めるセントルイスバレエにゲストとして来てもらったり、ということはあったのですが、一緒に舞台に立つのは初めてです。

──一緒にリハーサルをされてみていかがですか?

堀内:細かい動きや解釈を追求される姿が凄いですね。多くの素晴らしい振付家と仕事をしてきた都さんが、振付家を選ばずに僕の作品にも真剣に取り組んでくださっている。

吉田:選びに選んで、堀内さんの作品に出演させていただいてるのですよ(笑)。やはりバランシンの影響を受けていますよね。

堀内:都さんが踊って来られた(英国ロイヤル)スタイルとだいぶ違うと思うのですが、それを都さんの解釈で自分のものにして、表現されるのはさすがです。

──日本とアメリカ、イギリスのバレエって、客層をはじめ違うことがたくさんあるかと思うのですが、どう感じられていますか?

吉田:やはり、お客様の層が違いますね。イギリスでは男女半々、年配の方も多いです。日本はバレエを習われているお嬢さんとお母さんといった女性が多いですね。イギリスではバレエを社交の場として使う場合もありますし、国どうしだったり、会社の接待に使われることもあります。一方、日本だと男性が行きにくい雰囲気があるような気がします。

堀内:アメリカでも地域とかコミュニティの交流の場として使われる場合が多いですね。日本ではダンサーへの期待感からバレエを観る人が多いですが、アメリカでは、作品からメッセージを得るという観方も多い。例えば戦争についてとか死とか……。まだまだ、日本にはそういう楽しみ方を発見していない人が多いのが観客層に影響しているのではないでしょうか?

──これまで、海外で活躍されてきて、大変だったこと、それをどう乗り越えたかをお一つずつ聞かせていただけますか?

堀内:一つっていうのは難しい、30くらいはありますね(笑)。

吉田:たくさんありますが、一番厳しかったのは、世界中から集まったダンサーの実力を毎日見せつけられることでしょうか。何とかできるところは最大限の努力をしますが、努力だけでなんとかなるものでもない。努力を重ねた人が何十人も脱落していくのも見ていますから……。

堀内:ロンドンもニューヨークも、毎日がオリンピックのようなもの。世界中から集まってきた人がしのぎを削る。

──気の休まる間がない。

吉田:そうですね、気の休まる間がありません。そういうところで元さんにサポートしていただきました。入ってみて初めて分かることもありますから。もちろん、そこで踊ることができるのは光栄なことで、できる限りのことはするし、離れるなんて考えられなかった。だけど、離れたら離れたでホッとしたり。

──お話が変わりますが、ニューヨークシティバレエがこの秋来日します。堀内さん、どんな魅力があるか教えていただけますか?

堀内:ニューヨークシティバレエは、常に新しい作品を求めるところです。もちろん「白鳥の湖」などの古典も上演するバレエ団ですが、新しい“バレエ”を創ることを大切にしている。コンテンポラリーとは言わない、新しい“バレエ”です。それはバランシンの時代からずっと。自分たちの伝統を守りつつ、新しい作品に挑戦し続けているんです。

──さっきおっしゃったメッセージを受け取ることのできる作品がありそうで、楽しみです。最後に、お二人の今後のビジョンをお話いただけますか?

吉田:いつまで踊れるか分かりませんが、踊ることができる間は精いっぱい頑張っていこうと思っています。教えていて感じる日本人の良さは真面目なところ、それは活かされると思います。だけど、言われた通りに体を動かすだけのダンサーではなくて、その人から発せられるメッセージが出せるような──そんなアーティストが育って欲しいなと思います。

堀内:今、バレエ団を育てるということにとても興味があります。もちろん、自分の作品も創りたいけれど、バレエダンサーを育てて、彼らを踊るだけじゃなく、振付の機会も与えて……といった風にトータルに。ニューヨークシティバレエの芸術監督ピーター・マーティンスが、バランシンから得たアドバイスということで、話してくれたのですが、アーティスティック・ディレクター(芸術監督)というのは、全てをしなくてはいけないということ。振付も、指導も、それに経営も。ピーターがスーツ姿で会議に行って、帰って来たらネクタイを外して指導する、格好いいなと思いました。僕も、と思います。

──お二人のご活躍、ますます楽しみです。本日はありがとうございました。

 ※有料会員向けページにはインタビューの全体を動画で掲載しています。また、今回の公演のダイジェスト映像を、9月11日午後に、スターファイルに掲載する予定ですので、ご期待下さい。

続き(有料部分)を見る


〈吉田都さんプロフィール〉
東京都生まれ。1983年にローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞を受賞。同年ロイヤルバレエ学校に留学。84年に芸術監督ピーター・ライトに認められ、サドラーズウェルズロイヤルバレエ団(現バーミンガムロイヤルバレエ団)に入団。88年にプリンシパルに昇格。89年にグローバル賞を受賞。91年に英国のダンス専門誌「Dance&Dancers」の人気投票でダンサー・オブ・ザ・イヤーに選ばれる。93年にローザンヌ国際バレエコンクール審査員。95年英国ロイヤルバレエ団にプリンシパルとして移籍。中川鋭之助賞を受賞。96年には橘秋子賞を受賞。97年に芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。98年に服部千恵子賞を受賞。2001年には芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。02年に橘秋子特別賞を受賞。04年にはバレリーナとしての功績とチャリティ活動での社会貢献によってユネスコ平和芸術家任命。東京新聞主催の舞踊芸術賞を受賞。06年Kバレエカンパニー プリンシパル(翌年ゲストプリンシパル、09年退団)、英国ロイヤルバレエ団ゲストプリンシパル。英国批評家協会より英国最優秀女性ダンサー賞、日英協会ジャパンソサエティアワードを受賞。07年に紫綬褒章受章、大英帝国勲章(OBE)受勲。10年英国ロイヤルバレエ団退団、神戸女学院大学特別客員教授を務める。11年毎日芸術賞を受賞。12年には第43回舞踊批評家協会賞を受賞、国連UNHCR協会国連難民親善アーティスト、3度目のローザンヌ国際バレエコンクール審査員を務める。現在、フリーランスのバレリーナとして各方面で活躍中。

〈堀内元さんプロフィール〉
東京都生まれ。1980年にローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップ賞を受賞、16歳でスクール・オブ・アメリカン・バレエに留学。82年、ジョージ・バランシンに認められ、ニューヨーク・シティ・バレエ団に日本人として初めて入団。その後、東洋人として初のプリンシパルダンサーに昇格、バランシンの愛弟子として数々のレパートリーを踊る。またミュージカルにも進出し、「キャッツ」では、NYブロードウェイ、ロンドン・ウエストエンド、東京の3都市の公演に出演した唯一のダンサー。また、98年の長野オリンピックでは、開会式の振付を手がける。2000年からは、セントルイス・バレエの芸術監督として、バレエ団と付属バレエ学校の運営に敏腕をふるい発展に寄与、アメリカのバレエ団の芸術監督ポジションに日本人として初めて就任している。05年、NHK「遠くにありてにっぽん人」で特集され、その劇的な人生が話題を呼んだ。ローザンヌ国際バレエコンクールで過去5回審査員を務めており、近年は特に若いダンサーの育成にも力を注ぎ、日本では東京と大阪で、毎年夏と冬に直接指導するワークショップを開催。そして、拠点のセントルイス・バレエでは日本人ダンサーを起用するなど、日米文化交流とダンサー育成に貢献している。10年より、兵庫県立芸術文化センターにおいて「堀内元バレエUSA」を毎年8月に上演、自身の振付作品の国内定期公演に尽力している。

【写真】吉田都(写真右)、堀内元(同左)=撮影・岸隆子

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◆「堀内元バレエ USA IV」
《兵庫公演》2013年8月30日(金)〜8月31日(土) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
※公演は終了しています

(関連リンク:吉田都オフィシャルウェブサイト)
http://miyako-yoshida.com/

(関連リンク:堀内元公式ホームページ)
http://www.h7.in9.squarestart.ne.jp/a2/artist/horiuchi.html
(関連リンク:Saint Louis Ballet公式サイト)
http://www.stlouisballet.org/

《筆者プロフィール》菘あつこ(すずな あつこ) 大阪府出身、兵庫県在住。広告会社、出版社勤務を経て、フリーランスのジャーナリストに。幼い頃から愛してやまないバレエ・ダンスを第一の得意分野に、芸術文化から社会と比較的幅広いジャンルでの執筆活動を行っている。朝日新聞大阪本社版、神戸新聞、各バレエ誌、一般誌等に執筆。バレエに関する著書に「ココロとカラダに効くバレエ」(西日本出版社)。元・ロングディスタンス(swim3.9km、Bike180.2km、Run42.195km)のトライアスリートだったという顔も持つ。

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