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特集【公演評】「堀内元バレエUSA IV」
英で活躍の吉田都が、米の明るい雰囲気を体現

2013年9月11日

「堀内元バレエUSA IV」公演より=動画撮影・岸隆子

 ジョージ・バランシンに認められ、ニューヨーク・シティ・バレエ団に入団、東洋人として初のプリンシパルになった堀内元。彼は現在、セントルイス・バレエの芸術監督を務める。彼のことはバレエファンなら誰でも知っているが、4年前までは彼の振付作品や踊りを日本で観る機会はほとんどなかった。そんななか、4年前に兵庫県立芸術文化センターのオリジナル企画として「堀内元バレエUSA」という公演が誕生、以後、毎年夏に行われている。そこに今年は、英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルとして長年活躍してきた吉田都がゲストとして加わった。堀内元と吉田都と言えば、海外で活躍した日本人ダンサーで大きな成功をおさめた先駆者といえるダンサー(もっと前の時代にも海外で活躍した日本人はいるが、芸術監督やプリンシパルにまで登り詰めたという意味では先駆者といえるだろう)、その2人が共演する。それも2人はアメリカとイギリスに分かれて活躍して来たので一緒に組んで踊るのは初めてということ、期待でワクワクしながら劇場に出かけた。(フリージャーナリスト・菘あつこ)

 まず幕開けは「Vivaldi Double Cello Concerto」 。ちなみにこれも含めて、今回上演された3作品はすべて堀内元振付。ブルーのライトの中、白のクラシックチュチュのダンサーたちが踊る。ヴィバルディの音楽に乗せたオープニングらしい華やかな群舞。セントルイス・バレエのファーストアーティスト、森ティファニーや、昨年のヴァルナ国際バレエコンクールで銀賞を受賞した涌田美紀など国際的に活躍する若手ダンサーが多数出演した。

 続いて、堀内元によるビデオ・プレゼンテーションということで、セントルイス・バレエの「くるみ割り人形」公演に吉田都がゲスト出演した折の映像などが堀内のトークとともに披露された。

 その次の作品、「Save the Best for Last」が私には特に心に残った。コンテンポラリー・ダンスを踊る女性(チューリンゲン州立バレエ団の川端千帆)とクラシック・バレエを踊る男性(スクール・オブ・アメリカン・バレエを卒業して、現在、日本で活躍する末原雅広)が、寺嶋千紘の弾くピアノのソロに乗って踊る。伸びやかなコンテンポラリーとキリッとしたクラシック、タイプの違う2人の動きがだんだんと溶け合って、ひとつのパ・ド・ドゥになっていく。ピアノの強弱も踊りと息が合い、全体が優しいトーンに包まれたとても良い作品だと感じた。踊った川端と末原のダンサーとしてのレベルの高さも実感した。これまでの公演も振り返って、2011年に上演された、事故で大切な存在を亡くした女性の悲しみを描いた「Le Reve」など、堀内はこのようなストーリー性を感じさせる作品で繊細な感情を上手く表現する、より大きな魅力を出すことができる振付家という気がする。

 そしてラストは、吉田都、堀内元が中心になっての「Romantique」。床で開脚などストレッチをするハイソックス姿の堀内、上手に彼の頭の中の理想のように現れて、すぐに消えてしまう白い衣装の吉田都。クロード・ボリングのジャスに乗って、複数の男女の愛が描かれる。アメリカらしくおしゃれ。終盤には、堀内のアラセゴン・トゥールや吉田のフェッテ・アン・トゥールナン、堀内のジュテ・アン・トゥールナン、吉田の鮮やかな速いシェネなどクラシックの大技も続き、客席は釘付け。何より、やっぱりさすが、と思ったのは、吉田がこれまで踊って来た英国ロイヤルのスタイルと、このアメリカ的なスタイルとは随分違う筈なのに、彼女がアメリカンな陽気で華のある魅力を誰よりも表現しているように見えたこと。そして、そのなかに同時に、ヨーロッパの気品と呼びたくなるような魅力も漂っていたこと。作品の雰囲気を掴んで自分のものにして表現することに、とても長けたダンサーなのだということを実感した。

 また、吉田・堀内の共演はどこかで観られるだろうか? ぜひ、そんな機会があると嬉しい。

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【写真】「堀内元バレエUSA IV」公演より=撮影:岸隆子

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◆「堀内元バレエUSA IV」
《兵庫公演》2013年8月30日(金)〜8月31日(土) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
※公演は終了しています

《筆者プロフィール》菘あつこ(すずな あつこ) 大阪府出身、兵庫県在住。広告会社、出版社勤務を経て、フリーランスのジャーナリストに。幼い頃から愛してやまないバレエ・ダンスを第一の得意分野に、芸術文化から社会と比較的幅広いジャンルでの執筆活動を行っている。朝日新聞大阪本社版、神戸新聞、各バレエ誌、一般誌等に執筆。バレエに関する著書に「ココロとカラダに効くバレエ」(西日本出版社)。元・ロングディスタンス(swim3.9km、Bike180.2km、Run42.195km)のトライアスリートだったという顔も持つ。

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