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特集(2)タカラヅカで学ぶ世界史(ドイツ編)!?

2013年9月17日

写真:「春雷」より「春雷」より、サビーネ役の沙月愛奈(写真右)とロルフ役の真那春人(左)=撮影・岸隆子

 物語の時代背景に目を転じてみると、ウェルテルがロッテと出会ってから死に至るまでの一連の出来事は、1771年のことである。1771年のドイツとは、どういう時代だったのだろう? 

 当時のドイツは小国が分立していたが、この時代の人物で有名なのは、何といってもプロイセンのフリードリヒ2世(大王)だろう。「君主は国家第一の僕(しもべ)」と自らを称し、プロイセンをヨーロッパの一大強国とした立役者である。オーストリアの女帝マリア・テレジアの宿敵として、「ハプスブルクの宝剣」(2010年星組公演)にもちらりと登場している。ただ、ウェルテルが仕えたのはその南にあったザクセン=ワイマール公国という小国のようである。

 2幕の冒頭、虚飾に満ちたワイマールの宮廷の空気にまったくなじめないウェルテルに対して、「彼はユンカーの出身ですからねえ」という中傷が浴びせかけられる。ちょっと世界史の教科書みたいな台詞なのだが、「ユンカー」とは、「エルベ川以東の地主貴族」のことだ。とりわけ隣国プロイセンでは、ユンカーが高級官僚・軍人の職を独占して君主の統治を支える存在であった。

 ウェルテルは、法律を学び、エリートコースを期待されていた若者のひとりだったのだろう。だが、適応できずにドロップアウト、田舎の美しい女性との恋に逃避したということか。時代の落とし子のような若者を描いたこの作品は、1774年に出版されてからまたたく間に大ベストセラーとなり、若者たちはウェルテルの格好を真似し、自殺までもが流行ったとか。ヨーロッパ各国でも翻訳出版され、かのナポレオンも愛読者であったそうだ。

 「若きウェルテルの悩み」がゲーテ本人の実体験に基づいて描かれたことはよく知られた話だ。タカラヅカ版でも、冒頭とラストにゲーテ本人(彩凪・二役)が登場。ゲーテは物語の中で自分の分身を死に追いやり、それを作品として形にすることで、作家として命を長らえた。最後は蛇足、「若きウェルテルの悩み」の世界だけをシンプルに描ききったほうが、大恋愛物の世界に陶酔できた、という向きもあるだろう。だが、このラストは「文豪の性(さが)」を描いた一幕として私は興味深かった。「恋は美しい。だが、人生には恋以外にも大事なものはある」というメッセージは、それはそれで極めて今風だ。

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