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特集(1)鋭く突きつけられる、「ノーマル」とは?

2013年9月18日

写真:「ネクスト・トゥ・ノーマル」より「ネクスト・トゥ・ノーマル」より=写真提供:東宝演劇部

 幕が上がるとそこには一見、何の変哲もない4人家族の朝の光景。出勤前の夫に登校前の息子と娘、そして妻のダイアナ(安蘭けい/シルビア・グラブ ※ダブルキャスト)が朝食の準備にいそしんでいる。…が、よくよく見るとダイアナの言動は何だか妙だ。彼女は16年来の「双極性障害」の患者なのだ。

 しばらくすると、さらに驚くべきことがわかる。息子のゲイブ(小西遼生/辛源 ※ダブルキャスト)は、どうやらダイアナだけにしか見えていない存在らしい。現実の彼は生まれてからすぐに死んでしまっている。一見普通の男の子に見えながら、じつはこの世のものではないという妖しさを、ゲイブ役の小西が巧みに表現してみせる。

 夫のダン(岸祐二)は、妻の回復を心から願い、忍耐強く献身的にダイアナに寄り添い続ける。世間的にみれば理想的な夫だ。だが、そんなダンの存在がときにダイアナを苦しめる。ダンが、強引ともいえる方法で呼び寄せようとする世界と、幻影の息子ゲイブがいざなう世界との間で困惑し続けるダイアナ。どちらがいったい「ノーマル」なのか? そんな問いが、客席の私たちにも鋭く突きつけられる。

 「ノーマル」に育ったはずの娘ナタリー(村川絵梨)も苦しみを抱えている。母の愛に飢え、その母にしか関心がないように見える父からの愛にも飢えている。ナタリーの苦しみは、身近に心の病の患者を抱える多くの人にとっての苦しみでもある。自らアブノーマルな世界に逃げ込もうとするナタリーに寄り添う恋人ヘンリー(松下洸平)は、マリファナを常用する不良少年だが、ナタリーに注ぐ真っ直ぐな愛情は誰よりも「ノーマル」に感じられる。

 ダイアナを担当する精神科のドクター・マッデン(新納慎也)が不気味な存在感を発揮する。彼の中にはヒトという生物における「ノーマル」の基準が明確にあり、しかも、医学の力をもってすれば、ノーマルの横の人を基準内に呼び戻すことができると確信している。だから、恐ろしげな電気ショック療法を施すことにも迷いはない。

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