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特集(5)朝夏スカーレット、ふだんの男役を消し去る

2013年10月8日

写真:「風と共に去りぬ」より「風と共に去りぬ」より、スカーレットI 役の朝夏まなと(左)、スカーレットII 役の純矢ちとせ(右)=撮影・岸隆子

 「しんどい、疲れた、もうやだ」「綺麗なプレゼント、ラッキー!」。コロコロと気分が変わり、常に高飛車で、まるで現代のギャルのように屈託のないスカーレット。そんな彼女が好きなのはアシュレのような草食系青年で、レットのような肉食系おじさまは苦手でたまらないのでしょう。なのにレットはそんな彼女を面白がるように口説き、スカーレットがそれに翻弄されていちいち反応する様子が可愛らしく、観ているこちらもどんどん彼女に惹きつけられていきます。

 初日に演じたのは朝夏さん。丸顔に大きな瞳がドレス姿に映え、想像以上に可愛らしくて、声や演技にも違和感がありません。男役の良さを生かしたスカーレットの強さをしっかり表現しながら、愛するアシュレの前では乙女になってしまうしおらしさもにじませ、ふだんの貴公子風男役の気配を見事に消し去っていました。

 レットのおかげで命からがらタラに戻ったものの、故郷はすっかり焼け野原に。何もかも失ってしまったスカーレットは絶望の淵に叩き落とされながらも、乳母のマミー(汝鳥伶)と再会し、もう一度やり直そうと決意します。1幕の終わりに歌い上げる「明日になれば」は、宝塚史上に残る名シーンの一つです。

 戦争で何もかもなくなってしまったところから、スカーレットはどうやって立ち上がって行ったのでしょうか。メラニーを守りながら、アシュレへの愛は断ち切れたのか。そしてレットとの関係は…。

 当初、「レットってロマンチックのかけらもなくて、なんだかいやらしい男ね」などと思ってしまうのですが、実は包容力があって頼りになるし、実はすごくピュアな人? なんだか母性本能まできゅんとくすぐられるような…と、スカーレットのみならず、レットへの印象も変化していくことにも気づかされます。これはレットが無頼にふるまいながらもスカーレットのことを本当に愛していることが徐々に伝わってくるからかもしれません。

 それに気づくと、最初の自分の考えがなんて愚かだったのだろうと、ショックすら覚えてしまうのですが、それこそまさにスカーレットと同じ心境を辿っているではありませんか…。

 有名なラストシーンは何度見ても胸に深く突き刺さり、いつまでも抜けない「ガラスの棘」のように耽美な余韻を残してくれます。

 南北戦争に翻弄される人々、戦火の中を駆け抜けるレットとスカーレットの馬車、夕映えに広がるタラの大地など、作品の持つスケール感を、シンプルな照明や演出だけで巧みに表現。「君はマグノリアの花の如く」など、心に沁み入る名曲の数々。私も舞台で観たのはこれが初めてでしたが、やっぱり名作はいつの時代に観ても素晴らしい。あらためてそう実感した舞台でした。

 「タキシード・ジャンクション」や「セントルイス・ブルース」「ナイト・アンド・デイ」など、おなじみのショーも再現され、昔、夢中になっていたファンのみなさんの心もくすぐってくれます。

 暑さも一息ついて、芸術の秋を迎えるこの時期、2世代、3世代そろって、劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。

【フォトギャラリーはこちら】

◆「風と共に去りぬ」
《宝塚大劇場公演》2013年9月27日(金)〜11月4日(月・祝)
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/351/index.shtml
《東京宝塚劇場公演》2013年11月22日(金)〜12月23日(月)
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/352/index.shtml

《筆者プロフィール》さかせがわ猫丸 大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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