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特集(4)月と歌とこころが1枚の絵のように…

2013年10月16日

写真:「真田十勇士」より「真田十勇士」より=撮影・阿久津知宏

 ふんっ、ふんっと声を荒げながら、重々しい動きで刀を振る幸村。その姿はまるで、金剛力士のよう。己が信じるもののために、仲間と共に戦い、命を燃やした最期。その命が果てようとする瞬間、彼の背後に満月が現れた。月が出る舞台は珍しくはないが、本作の月はインパクトが違う。舞台のど真ん中、壁一面を覆うほどの大きさの、朱い月。そこで主題歌の「月はそこにいる」が流れ、中島みゆきの低い重厚感のある声が場内に響く。幸村の姿はやがて、月の光に照らされて、シルエットで浮かんだ。気高い山…そんな風に見えた。

 一枚の絵のように浮かび上がったその光景は、幸村と家康の関係、さらには豊臣の時代から徳川幕府の黎明期を象徴しているよう。これからの世を統治するのは徳川であっても、奥深いところで世の中を見つめる目がある。目に見えないそれを、あえて視覚化したのが、あの静かに燃えたぎる月のように思えた。

 ここで丁寧に表現されていた死に様は、魂を継承していくための、一つの通過点のように感じられた。肉体は滅んでも、その魂は次なる時代に転生していく。本作は、幸村と勇士たちの死を舞台で昇華させ、“こころ”を継ぐこと、その道しるべを示してくれた。静かに心に迫ってくる秀作だった。

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◆舞台「真田十勇士」
《東京公演》2013年8月30日(金)〜9月16日(月・祝) 赤坂ACTシアター
《名古屋公演》2013年9月21日(土)〜23日(月・祝) 中日劇場
《大阪公演》2013年10月3日(木)〜6日(日) 梅田芸術劇場メインホール
※公演は終了しています

《筆者プロフィール》桝郷春美(ますごう・はるみ) 福井県小浜市出身。人生の大半を米国ですごした曾祖父の日記を読んだことがきっかけでライターを志す。アサヒ・コム編集部のスタッフとして舞台ページを担当し、2012年1月よりフリーランスのライターとして活動。朝日新聞デジタルでの取材・執筆のほか、人物ルポを中心に取り組む。

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