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特集(3)時代に必要とされるミュージカル

2013年10月18日

写真:「エニシング・ゴーズ」公演より「エニシング・ゴーズ」公演より=写真提供・東宝演劇部

 ところでこの作品、初演されたのは1934年で、まさに世界恐慌(1929年)の後である。一見ドタバタコメディのようだが、よく見るとこうした時代背景を感じさせる要素が散りばめられている。おそらく初演の頃の時代の空気は、日本でいうとバブルが弾けた後、あるいは今にも近かったのではないだろうか。

 娘を安定した家柄の貴族と結婚させたいハーコート夫人はおそらく大恐慌で財産を失ったのだろうし(結婚が破談になったときも「また貧乏暮らしに逆戻り!」と嘆いている)、その娘が恋する相手が「株屋」のビリーだというところも深い(乗客から「金返せ!」となじられる一幕もある)。

 「誰でもいいからセレブと一緒の船に乗りたい」という乗客の要望に四苦八苦する船長の様子なども、「有名人好きな大衆」を風刺しているように思える。1934年といえば、ちょうどボニー&クライドが射殺された年でもある。ムーンフェイスが劇中でしばしば「デリンジャーもこう言っている」というが、当時スター扱いされた凶悪犯にデリンジャーというギャングもいたようだ。凶悪犯でさえも「有名人」であればもてはやされる、そんな時代だったのだろう。

 だからこそ、ややこしい時代の空気をものとせず、明るくキッパリと生きるリノが、清々しく感じられる。そして、ギャングとしては中途半端かもしれないけれど、人間味溢れるムーンフェイスの存在も味わい深い。そういう意味でもこの作品、今の時代に必要とされるミュージカルといっていいのかもしれない。

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◆「エニシング・ゴーズ」
《東京公演》2013年10月7日(月)〜28日(月) 帝国劇場
《大阪公演》2013年11月1日(金)〜4日(月) シアターBRAVA!
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://www.tohostage.com/anything/

《筆者プロフィール》中本千晶 フリージャーナリスト。宝塚関係の著作に「宝塚読本」(文春文庫)、「なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか」(小学館新書)、「なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか」「ヅカファン道」(東京堂出版)。2013年9月に「タカラヅカ流世界史」(東京堂出版)を出版。スターファイルでも「ヅカナビ」連載中。

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