マイコンテンツ

ここから本文エリア

特集(2)演技が音楽に支配される初めての経験

2013年11月26日

写真:交響劇「船に乗れ!」制作発表より交響劇「船に乗れ!」制作発表より=撮影・岩村美佳

菅野こうめい(演出・作詞)
 ありがとうございます。プレ稽古というのは3週間ぐらいやっているんですけれど、本格的な稽古は、今日まさにこの稽古場で始まろうとしています。ここの場で皆さんを前にお話出来ることをとても光栄に思います。「船に乗れ!」ですが、お話については池田さんからご紹介にあったとおりで、サトルという主人公が入学した新生学園大学附属高等学校音楽科の3年間を描いたものです。池田さんから2年前に、「藤谷治さんの『船に乗れ!』という小説があるんだが、君は読んだことがあるか?」と聞かれ「いえ、ありません」と答えると、「舞台化したいので、3日後に打ち合わせしたいので、読んでおいてくれ」と、せっかちなんですよね。すぐに電話してきて。そういうときは事務所の人が本を家に届けてくれたり、送ってくれたりするんですけれど、そういう話はいっさいなくて、私はAmazonで自分で買いました(笑)。

 読んでみると本当に音楽学校の話で、全編に音楽が流れていて、クラシックのメロディが聞こえてくるんです。舞台化を前提に読んでいるもんですから、まずはそのスタイルを探さなければいけない。これはどういう風にしたら舞台になるんだろう?当然読んでいくうちに音楽が聞こえていますし、その音楽が主人公たちの心情を実に巧みに表しているので、これはやっぱりミュージカルだろうなと思いましたが、流れてくる音楽は全部クラシックです。クラシックを相手にミュージカルというのはちょっと難しいかなぁと、ミュージカルになるかわからないけれど…と思いながら最初の打ち合わせに行ったんですが、僕の中ではミュージカルというものがずっとありましたが、ミュージカルをやっている人間として僕は、簡単にミュージカルという言葉を使いたくなかったので、最初に企画書を作らなくてはいけなくてフレーズを考えたときに、「ミュージカルになるかわからないので、ミュージカルと言わないでください」と言ったんです。「じゃあ何か?音楽劇か?」と聞かれ、音楽劇って演劇が勝っていて、音楽が添え物みたいな印象があったので、「いや、音楽劇ではないと思います。もっと主役は音楽です。シンフォニックドラマというのはどうでしょう?」とお話ししました。

 なぜかというと、この物語を立体化していくうえでオーケストラというのが外せない要素だったので、ステージの上にオーケストラがいて、その前でお芝居をするというスタイルを思っていました。シンフォニックな劇という意味で思いついたのですが、それを日本語に直して「交響劇」というのはどうでしょうかというところで、キャッチフレーズが先に決まってしまいました。脚本作業に入ってくるとやっぱりこれはクラシックの音楽をいかにして主人公たちが歌ったり、オーケストラのシーンで流れている音楽を演奏したり、まさに俳優と音楽家たちが舞台の上で「交響」しあうというか、響き合う劇になるのではないかという確信になってきました。その結果ベートーヴェン、ヴィヴァルディ、チャイコフスキー、それぞれ名作のメロディに歌詞をのせるという作業を進めまして、主人公たちはその名曲にのった歌詞を自分の心情として歌い上げるといった、まさにミュージカルシーンを作って行こうと。

 それと同時に藤谷さんの原作の中で、僕が一番面白かったのが演奏シーンです。藤谷さん自身がチェロをお弾きになっていたので、そのときに演奏家たちがどう思って曲を弾いているのか、オーケストラの中でどんなことが行われているのか、そういうことも巧みに藤谷さんの文章で書かれていて、テンポが速いところは速く読み進めるし、テンポがゆるいところではじっくり読んでしまうというような、名文だと思っているんですが、やっぱりミュージカルとして成り立たせたい、演奏シーンも歌として立体化していきたいと。それがミュージカルのショーシーンになるだろうということで、そういうシーンを取り込んでいます。

 なおかつ、ミュージカルでいうアンダースコアですけれど、映画でいうサウンドトラック、普通にいうとBGMですけれども、普通はお芝居に合わせて作るのですが、今回は例えばモーツァルトの「魔笛」の「序曲」ですが、「序曲」をまるまる演奏している間にお芝居が行われる…つまり音楽に合わせてお芝居を作るというような試みもしています。そういう意味では俳優さんたちは演技が音楽に支配されるというか、初めての経験だと思いますが、そういうことを含めて新しいミュージカルの形だと思いますが、「交響劇」というものになっていると思います。

 それが実際にどういうものなのか、今日は特別に1曲ひとつのサンプルをお聞かせします。18才のサトルを演じます山崎育三郎くんをはじめとする、新生学園大学附属高等学校音楽科の生徒の皆さんです!こう見えてもこの人達高校生です(笑)。聞いて頂くのは、彼らが入学して1年目、彼らには専攻の楽器の個人個人の演奏の他に、皆で集まって、オーケストラの練習があるんですけれども、夏の清里の合宿所で初めてオーケストラの稽古をするシーンです。とても恐い先生・指揮者にいじめられ、怒られながら1曲を走破するというシーンです。曲はチャイコフスキー作曲「バレエ組曲『白鳥の湖』より第1曲.情景」です。

※ここで、学生役のキャストによる楽曲披露がありました。耳慣れた音楽から、学生達の心の声が歌で聞こえてくるという、新鮮なナンバーでした。

続きを読む

戻る

バックナンバー

宝塚歌劇一覧へ>> 舞台一般一覧へ>> 動画掲載記事一覧へ>> 過去記事一覧へ>>

過去記事一覧へ>>

ページトップへ戻る

Astandについて個人情報著作権利用規約特定商取引会社案内お問い合わせ