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特集【トピックス】朝日新聞連載「おお宝塚 それぞれの道」(上)
再び光を浴びたくて

2013年11月29日

 瞳ギラギラ。釘付けになる。9月末、東京で上演されたレビュー。タキシード姿のキザな男役に「チャッチー!」と黄色い歓声があがる。元雪組トップスターの郷(ごう)ちぐさ(68)だ。「男になれるところがあると聞いて、宝塚音楽学校を受験した」。根っからの男役だ。

 学校での成績は最下位付近だったが、1963年入団の同期でいち早くトップの座を射止めた。宝塚は観客の少ない冬の時代。それでも郷のファンは熱狂的だった。「天性のアイドル。とにかく光り輝いていました」。今もファンの松浦末子(すえこ)(63)は言う。

 だが、人気絶頂の72年、27歳で結婚退団。さよなら公演で、婚約者にファンからの祝辞はなかった。「正直もっとやりたかった。でも、いいお嫁さんに、というのが宝塚創設者の教え」。夫は大手商社マンで、主婦としてカナダなど海外転勤について回り、ファンとの連絡も途絶えた。

 一方、宝塚では74年初演の「ベルサイユのばら」が大ヒット。郷のファンが演出家植田紳爾(しんじ)に原作漫画を送り、「チャッチーにオスカルをやらせて」と願い続けた作品だ。オスカル役で人気を集めた同期の榛名由梨が、マレーシアにいた郷にテープメッセージを送ってきた。「チャッチーもいたら良かったのに」。うらやましい気持ちよりも「宝塚の成功が誇らしかった」と振り返る。

 帰国後、夫の社宅がある兵庫県宝塚市に再び住み始めた。花束を抱え、ファンを引き連れて歩いた宝塚大橋を、ダイコンをカゴに入れ、1人、自転車で走った。

 育児、介護に追われ、気づけば50代半ばのある日。京都のホテルで知人と楽しんだカラオケが転機に。シャンソンを熱唱する姿を見た副支配人が、ディナーショー出演を依頼したのだ。郷55歳。夫は「郷GOGOだ! 語呂が良い」と、背中を押した。

 「戸惑いもあったけど、もう一度ライトを浴びてみたいと思った」。2000年に再びステージに立つと、口コミで昔のファンが戻ってきた。今は年4、5回、レビューを中心に出演。むろん男役だ。

 「オーラも笑顔も昔のまんま」「“くささ”が天下一品」。ファンに取り巻かれ、はしゃぐ郷。そばには、うれしそうな夫の姿があった。

    ◇

 来春、宝塚歌劇は100周年を迎える。退団後の人生はいろいろだ。いったん離れた舞台に戻ったり、経営者として歌劇をもり立てたり。再び「夢の世界」の住人になったOGたちに光を当てる。=敬称略(河合真美江、谷辺晃子、成川彩が担当します)

【写真】元宝塚トップスターの郷ちぐさ=東京都中央区、西田裕樹撮影

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