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特集(5) 劇中劇中劇・反転…、マイノリティ尊重を根幹に

2013年12月9日

写真:「LILIES」(Sebastianiチーム)公演より「LILIES」(Sebastianiチーム)公演より

 そして、最後に紹介するのは、彼らの愛を悲劇的な結末に追い込む同級生ビロドーを演じた千葉だ。自身もシモンへ友情以上の思いを持ちながら、シモンとヴァリエの関係を糾弾し、歪んだ正義感という邪悪をまき散らす。そして、彼の嘘がふたりに破滅をもたらす。ビロドーの所業は許されないが、凡庸な彼がシモンという特別な美を手に入れたいとあがく姿は、まるでダダをこねる子供のようで、どこか切ない。入団1年目とは思えぬ個性を感じさせる力演で、今後の活躍が楽しみだ。

 なお、シモンとヴァリエが演じる劇中劇中劇「聖セバスチャンの殉教」で取り上げられている聖セバスチャンとは、熱心なキリスト教徒であったために処刑されたローマの軍人で、三島由紀夫やデレク・ジャーマンなど同性愛傾向の強い作家や芸術家が好んで取り上げた人物。異端として迫害され処刑されたセバスチャンの物語は、シモンとヴァリエの愛の悲劇的な末路を暗示するとともに、「社会の正義」がどれだけ時代の権力者や風潮によって変遷するかをも示唆している。

 そして、「LILIES」は、まさに今まで真実だと思っていた事実が嘘だったり、主従関係が逆だったりと、観ている間に脳内に築かれた物語がまるでオセロのように反転させられ、自分が見て信じてきた物語のあやふやさに戸惑わされる。また、時折過去の物語を寸断して現代に戻る劇中劇の構成は、観客をシモンとヴァリエの悲劇的な愛への感傷にとどめず、その根幹にあるマイノリティへのまなざしと個性を尊重する社会への志向に目を向けさせてくれる。

 戯曲としての面白さと奥深さが凝縮した「LILIES」を、繊細かつ大胆に立体化した倉田淳の熟達した演出力と、新人を思い切って抜擢した適材適所の役者起用も見事。なお、この作品は今までの上演にあたっては客演を呼ぶこともあったが、今回はスタジオライフのオリジナルメンバーのみでの上演。若手の粒が揃い、実力のある中堅・ベテランが充実した今のスタジオライフの実力を改めて知ることのできる、まごうことなき傑作だ。

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◆スタジオライフ「LILIES」
《東京公演》2013年11月20日(水)〜12月8日(日) シアターサンモール
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
 http://www.studio-life.com/

《筆者プロフィール》岩橋朝美 フリーエディター、フリーライター。WEBおよび出版を中心に、企画、編集、取材、執筆を行う。エンタテインメント、女性、仕事など、幅広いテーマで活動。

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