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特集(3)男役が演じるスカーレットの魅力

2013年12月17日

写真:「風と共に去りぬ」より「風と共に去りぬ」より、メラニー役の実咲凛音=撮影・岸隆子

 タカラヅカ版「風共」のスカーレットといえば「男役が演じる役」というイメージが強いが実際どうなのだろう?  過去の上演記録を調べてみたところ、やはり14人中9人が男役で、今公演を入れると16人中11人が男役スカーレットとなる。

 日本人離れした勝気さを持ったこの女性の「普通でない感じ」を出すためには、やはり男役が演じなければダメなのだと今回改めて思ってしまった。また、スカーレットという役、じつはヒロインのわりには衣装が異常に地味な役でもある。プロローグのおなじみの白いドレスこそ華やかだが、その後は喪服→エプロン姿(しかも戦場をくぐり抜けることでボロボロに)、そして二幕は人妻だから可愛らしい衣装はない。そんな地味な衣装を身につけてもなお圧倒的な存在感が出せるような、「美貌の男役」に演じて欲しい役だ。

 娘役トップの実咲凜音が気の毒との声も聞くが、逆にメラニーこそ、タカラヅカの娘役の強みが活かせる役である。ただ可憐なだけではない、芯の強さやしたたかさも備えた女性だからである(そこは「ベルばら」のロザリーなどよりもはるかにそうだと思う)。

 また、タカラヅカ版の大きな特徴のひとつとして、「スカーレット2」の存在もある。こちらはスカーレットの心の声だが、今回、日生劇場版以来11年ぶりにこの作品を観て、初めてスカーレット2の存在がしっくり来た。これまでは娘役の役を増やすための苦肉の策ぐらいにしか思っていなかったが(実際そういう側面もあるかもしれないが)、このスカーレット2の存在のおかげで、スカーレットの「嫌な女感」が大幅に軽減されるという効用があると思う。南部のうるさ方に囲まれ、しきたりやしがらみに縛られる中で、常に「本当のわたし」と戦い続けている女性という面が強調されるからだ。

 女性の社会進出が進むほどに、女性もまた、職場でタテマエとホンネを使い分けながら戦わなければならない。そういう女性たちの中には、内面にスカーレット2を抱える人も多いのではないだろうか。

 スカーレットという女性は元々好き嫌いが激しいキャラクターだ。こと男性に限っていうと私は今まで「スカーレットが好き」という男性に出会ったことがない(だから、スカーレットの美点をちゃんと見抜いているレットとアシュレに希少価値があるのだ!)。これを多数派に共感されるキャラクターに仕立て直すことは、そもそも「国民劇」を志向していた宝塚歌劇には必要なことであったろう。

 ダイジェスト版のようなタカラヅカ版「風共」を観て改めて、原作の力に思いを馳せてしまう。ああ、やっぱりスカーレットという女性が私は好きだし、レットのような男性は理想だわ。この冬休み、もう一度原作を読み返してみようかな…。

◆「風と共に去りぬ」
《宝塚大劇場公演》2013年9月27日(金)〜11月4日(月・祝)
※この公演は終了しています
《東京宝塚劇場公演》2013年11月22日(金)〜12月23日(月)
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/352/index.shtml

《筆者プロフィール》中本千晶 フリージャーナリスト。1967年山口県生まれ。東京大学法学部卒業。株式会社リクルートで海外ツアー販売サイトの立ち上げおよび運営に携わる。2000年に独立。小学校4年生のときに宝塚歌劇を初観劇し「宝塚に入りたい」と思うも、1日で挫折。社会人になって仕事に行き詰まっていたとき、宝塚と再会し、ファンサイトの運営などを熱心に行なう。宝塚の行く末をあたたかく見守り、男性を積極的に観劇に誘う「ヅカナビゲーター」。13年9月に「タカラヅカ流世界史」(東京堂出版)を出版。

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