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特集(3)「好き」に向き合うということ

2014年1月21日

写真:「Shall we ダンス?」より「Shall we ダンス?」より、エラ役の早霧せいな=撮影・岸隆子

 この作品は、ハートフルなヒューマンドラマのように言われるが、実は「好きなことにどう向き合うか」という、人生における普遍的なテーマを軸に据えている。タカラヅカ版ではヘイリーのエラに対する「男の下心」の描き方がサラッとしている分、この点が強調されているが、それが逆にタカラヅカ版らしい良さになっているように感じた。

 「好きを仕事に」できたら幸せだと言われるが、それはそれで新たな苦労に直面することになる。プロとしてやっていく、あるいは頂点を目指す過程で、いつしか「ただ好きで好きで、楽しくてたまらない」という初心を忘れてしまう。

 そんな思考のワナにはまっているのが、ダンス教師のエラである。彼女は最初、ダンス教室に集まる有象無象の生徒たちがうっとおしくてたまらない。いつまでたっても下手くそなままなのにダンスを続ける彼ら彼女たちの気持ちがちっとも理解できないのだ。

 「競技ダンスこそ神聖なるもの」と考えるエラは、競技ダンス界のトップの地位にありながら、パーティーの出し物でイケメンダンサーたちと踊ってみせるアルバート(未涼亜希)をなじる。だがアルバートは「それで皆が楽しんで、ダンスに興味を持ってくれればいいじゃないか」と諭す。これまた様々なジャンルで良くある対立構造だけに、アルバートの言葉は胸に刺さる(タカラヅカもまさにそうで、TVのタカラヅカ特集番組で「タカラヅカってやっぱり恋愛禁止なんですか?」といった質問が飛び出すたびに私はイヤな気分になるのだが、それでタカラヅカに興味を持ってくれる人が増えればいいじゃないという考えもあると思う)。

 そんなエラに、忘れかけていたダンスへの純粋な思いを蘇らせてくれたのが、ほかならぬ平凡なサラリーマン、ヘイリーだったというわけだ。やがて、ダサくてウザいと思っていたダンス教室の面々にも、それぞれの事情とダンスに対する思いがあることがわかってくる。

 どんなに才能がなくても、何かが好きで好きで、一心に打ち込む姿勢は尊く、それ自体が美しい。観客はこの作品からそのことに気づかされる。それは、タカラヅカにおける「清く、正しく、美しく」の精神にも通じるものがあるし、登場人物一人ひとりが持つ清々しさは、日々舞台に打ち込むタカラジェンヌの持つ清々しさと重なってみえる。この題材とタカラヅカとの親和性は、そんなところにもあるような気がする。

◆「Shall we ダンス?」
《宝塚大劇場公演》2013年11月8日(金)〜12月12日(木)
※この公演は終了しています
《東京宝塚劇場公演》2014年1月2日(木)〜2月9日(日)
⇒内容については公式ホームページなどでご確認下さい。
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/360/index.shtml

《筆者プロフィール》中本千晶 フリージャーナリスト。1967年山口県生まれ。東京大学法学部卒業。株式会社リクルートで海外ツアー販売サイトの立ち上げおよび運営に携わる。2000年に独立。小学校4年生のときに宝塚歌劇を初観劇し「宝塚に入りたい」と思うも、1日で挫折。社会人になって仕事に行き詰まっていたとき、宝塚と再会し、ファンサイトの運営などを熱心に行なう。宝塚の行く末をあたたかく見守り、男性を積極的に観劇に誘う「ヅカナビゲーター」。13年9月に「タカラヅカ流世界史」(東京堂出版)を出版。

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