マイコンテンツ

ここから本文エリア

特集(3)「ブック・オブ・モルモン」を観るためNYへ

2014年1月31日

写真:NYブロードウェイ観劇レポート「ブック・オブ・モルモン」の 劇場前=撮影・岩橋朝美

 続いて紹介するのは「ブック・オブ・モルモン」。今回NYへ飛んだ理由のひとつが、この作品を観るため。過激な社会風刺で知られるアニメ「サウスパーク」の制作者として知られるトレイ・パーカーとマット・ストーンが初めて手掛けたミュージカルで、2011年のトニー賞で作品賞をはじめ9部門に輝いたブラック・ジョーク満載のコメディだ。

 ストーリーは、モルモン教の若き伝道師の二人組が、モルモン教布教のためにアフリカのウガンダに派遣されるところから始まる。ディズニーが大好きでディズニーワールドのあるオーランドへ派遣されたいと願っていた夢見がちの優等生プライスと、アフリカに派遣されると聞いて「ライオン・キングみたいだ!」とはしゃぐオタクでマザコンのカニンガム。現実認識が甘いままウガンダへやって来たふたりは、戦争やエイズなど問題山積で、現地の言葉で「ファック・ユー・ゴッド!」と歌う民衆を前に、早くも前途多難に陥る。

 まぁ〜、とにかく全編笑えた! ブラックな笑いが満載なので英語力に乏しい身としては全部の台詞はわからないものの、それでも存分に楽しめるのは、痩せのプライスと太っちょのカニンガムという、見た目にもギャップのある主人公コンビをはじめ、ビジュアルや表情、ダンス、曲調など、言葉以外の部分で面白さを伝える工夫が満載だからだ。

 なかでも、ザ・ミュージカル調の曲調からロックまでを盛り込み、笑えると同時にカタルシスを与えるポップな楽曲群は、CDで聴くだけでも楽しめたが、実際に舞台で見ると、そこにトゥーマッチなほどエネルギッシュなダンスや、某SF映画に登場する著名なキャラクターのパロディなど思いがけない登場人物たちが加わり抱腹絶倒!

 ウガンダに先に派遣されていた先輩伝道師たちが、まだひとりも信徒を獲得していないと落ち込みながらも、「嫌なことは消しちゃおう!」とピンクのベストを着て陽気に歌い踊り、タップまで披露する“Turn It Off”。人が殺されるところを目の当たりにし「アメリカに帰る!」というプライスに対し、「ひとりでこの地でがんばっていくぜ!」と歌うカニンガムのナンバー“Man Up”は、ヘビーメタル調のメインの旋律に、それまでのさまざまなナンバーをマッシュアップ。ダメなオタク男子だったカニンガムがロックスターのように、ステージの中央でスポットライトを浴びて歌うさまは、笑いを超越してカタルシス最高潮!

 また、二幕では、プライスが再び自信を取り戻して朗々と歌い上げるナンバー“I Believe”が聴きどころ。銃を持って戦闘中のウガンダ人の腕をとり、モルモン教の信仰心について説くカン違いぶりが爆笑を誘いつつ、同時に楽曲の素晴らしさに感動してしまう。歌詞を読むと、モルモン教の信条に対する痛烈な批判が織り込まれているので、それを知るとより楽しめるが、わからなくても二者間のズレの面白さが伝わるのが秀逸だ。

 物語は意気消沈したプライスに代り、カニンガムが信徒集めに奔走。だが、退屈な教義に興味を示さないウガンダ人に、カニンガムは思わず口から出まかせで嘘の教義を流布。それが民衆の心を捉え、信徒がどんどん増えていく。そして、最後、嘘がバレそうになり…というところで、予想外のヒネリが効かせてあってうなった。ウガンダ人の無知を笑いにしながらも、そこで終わらない点も素晴らしい。宗教の矛盾を徹底的に突きながら、宗教が人を幸せにする意義は認めていると思われるラストで後味は爽やか。人が楽しく生きるためには、笑いと想像力が不可欠と思わせてくれるところにも共感した。バカバカしさの中に、さまざまなメッセージが込められた「ブック・オブ・モルモン」。おススメです!

続きを読む

戻る

バックナンバー

宝塚歌劇一覧へ>> 舞台一般一覧へ>> 動画掲載記事一覧へ>> 過去記事一覧へ>>

過去記事一覧へ>>

ページトップへ戻る

Astandについて個人情報著作権利用規約特定商取引会社案内お問い合わせ