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特集(6)閉鎖されたホテルを歩く、体感型の観劇スタイル

2014年1月31日

写真:NYブロードウェイ観劇レポート劇場となる「THE McKITTRICK HOTEL」=撮影・岩橋朝美

 今回はミュージカル観劇が主な中、1本だけ趣向の変わった作品を観劇。チェルシーの閉鎖されたホテルを舞台にした「スリープ・ノー・モア」は、館内の100に及ぶ部屋を約20人の役者が動き回りながら演技をし、それを観客は歩きながら観る。

 劇場となる“THE McKITTRICK HOTEL”に入ると、クロークで荷物や上着を預けさせられる。さらに進むと、ムーディーなラウンジに通され、支配人が迎えてくれる。観客は思い思いにアルコールなどを飲んでいると、渡されたトランプのカードの番号で呼ばれ、いよいよ芝居が始まるスペースへと案内される。

 劇場内では役者と観客が混在するため、役者と観客を区別するために、観客は全員仮面をかぶり、発言を一切しないように注意を受ける。室内は照明を極端に落としていて、それだけで恐怖感が増していく。さらに、アルフレッド・ヒッチコックの映画「レベッカ」や「めまい」がモチーフとなっているため、何気ないソファやバスタブといったクラシカルテイストの舞台装置もなんだかおどろおどろしくミステリアスに感じられる。

 ストーリーのベースは「マクベス」とは聞いていたものの、最初に案内され、見せられたシーンは、妊娠した女性と、彼女を誘惑するように怪しげなドリンクを与える女中、さらには彼女たちを引き離そうとする男性が登場し、駆け引きを繰り広げる。が、無言劇で役名も不明のため、正直言って、何が何だかわからない。だが、彼らが目の前で見せるコンテンポラリー・ダンスの技術に、ストーリーを追うことを忘れて気づけば没頭してしまっていた。

 しばらくすると、女中役と男性の役者がそれぞれ別の部屋へと移動し、誰について行けばいいのか、それともこのまま留まって見ていればいいのかと思案することに。とりあえず、大勢の観客と同じくそこに留まっていると、今度は別の男性の役者が現れ、彼女を傷めつけるような芝居を始める。

 多少の知識は入れて参加したとはいえ、薄暗い照明に仮面、妖しくミステリアスな世界観という非日常感の連続に、心臓の鼓動が激しくなる。自発的に役者を追い、部屋をチェックし、シーンをつなぎ合わせて意味を読み取るという観劇スタイルは、ロールプレイングゲームのようで独創的だ。そうしたアトラクション的な楽しさに加えて、わずか数十センチの目の前で繰り広げられる激しいダンスのライブ感にも圧倒された。

 登場人物を把握するコツとしては、マクベスとマクベス夫人をいかに早く見つけるかだが、私はとある記事で目にした役者のイメージが頭に残っていて、かなり終盤までミスリードされてしまった。意外なキャスティングになることも頭に入れながら臨んだ方がいいかもしれない。一度観ただけでは全シーンを観ることは難しいため、リピート観劇が後をたたないというこの作品。私はひとりでの参加だったが、ふたりで参加する場合は、あえて違う番号のトランプが渡され、それぞれに別のシーンを観られるよう案内されるそう。たしかに、終演後の興奮のままに、ふたりで答え合わせができるとより楽しめそう。

 大がかりな劇場が必要なため、日本で上演されるのはかなり難しいと思われるので、NYを訪れる予定のある方は、ぜひ体験してきてほしい作品だ。

 ほかにもまだまだ気になる作品があり、後ろ髪を引かれながらも初のNY観劇は以上で終了。大きな興奮と刺激をもらった観劇体験だった。また、素晴らしいパフォーマンスに贈られる観客のヒューヒューという掛け声も海外の劇場ならでは。「ウィキッド」「ブック・オブ・モルモン」では幕が上がる直前にも掛け声がかかり、観客の「待ってました!」という惜しみない歓迎が、役者のモチベーションを一層押し上げているように感じられた。あの劇場の熱気に包まれに、また近いうちにNYに行きたくなるに違いない。それまでに、英語力を磨こうと心に誓った。

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《筆者プロフィール》岩橋朝美 フリーエディター、フリーライター。WEBおよび出版を中心に、企画、編集、取材、執筆を行う。エンタテインメント、女性、仕事など、幅広いテーマで活動。

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